広げよう!ワンヘルス ~健康な地球を次世代の子どもたちへ~

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 世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症をはじめとする人と動物の共通感染症の脅威を防ぐため、人と動物の健康と環境保全を一体のものと考える「ワンヘルス」が世界的に注目されています。福岡県は全国に先駆けて「福岡県ワンヘルス推進基本条例」を1月に施行、医師会、獣医師会と連携して先駆的な取り組みを始めています。ワンヘルスの理念や必要性、取り組みの内容などについて服部誠太郎・福岡県知事、横倉義武・日本医師会名誉会長、藏内勇夫・日本獣医師会会長に伺いました。

ワンヘルスって何だろう?
 人、動物、環境は相互につながっており、人の健康を守るためには動物も環境も同様に健康であることが大切です。これらを「ひとつの健康」と捉え、関係者が連携して問題解決に当たる考え方を「ワンヘルス」といいます。人と動物の共通感染症や、薬剤耐性などの問題に対し、「ワンヘルス」の考えに基づく取り組みが世界的に広まってきています。「ワンヘルス」は以下の6つの項目から成り立っています。



ワンヘルスの理念と歴史的歩み


――なぜ今、ワンヘルスが必要なのでしょうか。


福岡県知事 服部 誠太郎氏

服部 新型コロナウイルス感染症など新興感染症の多くは人と動物双方に感染する人獣共通感染症で、人の感染症の6割を占めると言われています。自然環境に負荷をかける開発行為が増え、気候変動や生態系の崩壊が進んでいます。それによって、人と野生動物の生息区域が近くなり野生動物が持つ病原体が、免疫を持たない人間に伝染するようになりました。こうしたことから、人と動物の健康、環境の健全性を一つと捉え、一体的に守ろうというワンヘルスの取り組みは喫緊の課題と考えています。これはSDGsの目標の多くに関わってくるものです。


――ワンヘルスの歴史的経緯について教えてください。


藏内 ワンヘルスの端緒は1993年、世界獣医師会世界大会での「人と動物の共通感染症の発生予防やまん延防止、人と動物の絆の確立、社会の平和と発展や環境保全」をうたったベルリン宣言です。2004年にはアメリカで「ワンワールド・ワンヘルス」をテーマにしたシンポジウムが開かれ、12の行動計画「マンハッタン原則」が制定されました。12年に世界獣医師会と世界医師会が「ワンヘルス推進の覚書」を調印、獣医師と医師の垣根を越えた動きが世界に広まっていく契機となりました。
 そして、16年11月に北九州市で開かれた「第2回世界獣医師会-世界医師会"0ne Health"に関する国際会議」で、ワンヘルス実践の礎となる「福岡宣言」が採択されました。


第2回世界獣医師会-世界医師会"One Health"国際会議(北九州市)で「福岡宣言」を採択

――福岡宣言の意義について伺います。

横倉 北九州市での国際会議では国内外から多くの医師と獣医師が集い、人と動物の共通感染症、薬剤耐性菌対策などワンヘルスに関する重要な課題についての情報交換や有効な対策の検討を行い、大きな成果を収めました。
 この会議で、北九州市が大気汚染を克服した歴史を持つことを知ったインドの医師が日本の対策を導入したいとして翌年、インドでの大気汚染の会議につながったということもありました。さらに、ワンヘルスアプローチに関する国際間の合意が次々に行われており、今年5月のG7気候・環境大臣会合で取り上げられるなど、国際社会における関心の高さがうかがえます。このようにワンヘルス実践の礎である「福岡宣言」は極めて重要な意味を持つと考えています。

福岡県ワンヘルス推進基本条例

――ワンヘルス推進基本条例の概要についてお聞かせください。

服部 条例は福岡県議会議員でもある藏内会長の大変なご尽力により可決・成立しました。「人と動物及びこれを取り巻く環境は一つという考えのもと、みんなが守り、次の世代に引き継げるよう行動する」と基本理念を定めています。
 また、6つの基本方針を掲げています。①医療、獣医療をはじめ各分野と連携した「人獣共通感染症対策」、②薬剤の適正使用を推進する「薬剤耐性菌対策」、③自然環境の保全と生物の棲み分け維持を図る「環境保護」、④動物愛護の推進と野生動物の理解と共存を図る「人と動物の共生社会づくり」、⑤自然や動物とのふれあいを通じた「健康づくり」、最後に⑥健全な環境下における安全な農林水産物の生産などのための「環境と人と動物のより良い関係づくり」です。

――県議会議員の皆さんの問題意識はいかがでしたか。

藏内 福岡県議会は従来から議員提案に積極的で、「観光王国九州とともに輝く福岡県観光振興条例」や、「福岡県飲酒運転撲滅運動の推進に関する条例」などを成立させています。新型コロナのパンデミックが発生したことで、県議会での関心が高まる中、講演依頼があり、議員全員が参加する中で、ワンヘルスに関する考え方などの講演を行いました。九州各県の議会、団体、財界などでつくる「九州の自立を考える会」でも14年に防疫センターの必要性を提言しています。これらを踏まえ、議員提案政策条例検討会議で半年間、議論を重ねて提案、可決・成立しました。県議会の皆さんの関心の高さと熱意に触れ、頼もしく、ありがたく感じました。

――条例の基本方針の「人獣共通感染症対策」について、危険性や対策の重要性を教えてください。


公益社団法人日本医師会 名誉会長 横倉 義武氏

横倉 新型コロナのような新興感染症は、開発によって未知の病原体に人がさらされる機会が増えることで起きます。人や物の移動がグローバル化、高速化したために感染が短期間で世界的に流行する危険があります。一方、古くからの感染症で克服したと思っていたものが、環境の変化で再び流行する傾向もあります。再興感染症と呼び、デング熱や狂犬病などが知られています。
 新興、再興感染症ともに多くの人が免疫を獲得しておらずワクチンも開発されていないので新型コロナのように世界的に流行してしまいます。最近も、ダニによるウイルス感染症(SFTS)で死亡する例が報告されています。このように人獣共通感染症に対しては十分注意を払う必要があります。


ワンヘルスセンターの整備、アジア新興・人獣共通感染症センター(仮称)の誘致


――家畜やペット、野生動物への対策についてお聞かせください。

藏内 人の感染症に対しては感染症予防法がありますが、動物に対しては1951年制定の家畜伝染病予防法しかありません。環境問題などが話題になっていない時代の産業動物だけを対象にした法律です。新型コロナをはじめ最近問題になっている感染症は全て野生動物由来ですが、野生動物を検査する法律がないのです。愛玩動物についても同じです。この法律の隙間を埋めなければなりません。
 日本獣医師会では、一元的に感染症の対策を担うCDC(疾病対策予防センター)の設立を国に要望しています。その中で、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究部門、動物検疫所、動物医薬品検査所を統合して、日本版CDCにおける動物の感染症を担う部門とします。九州はアジアの交流拠点であり感染症も侵入しますから、拠点となる感染症センターが必要だと考えています。

――薬剤耐性菌対策について必要性や人体への影響を教えてください。

横倉 抗微生物薬は現代医療で大変重要な役割を果たしています。しかし、新たな抗微生物薬の開発が進まない一方で、その不適切な使用が薬剤耐性菌を作り出してしまいます。適正に使用しなければ将来、感染症を治療する際に有効な抗菌薬がないという事態も起こりえます。薬剤耐性菌を作らない適正使用は非常に重要です。

――家畜に対する薬剤耐性菌対策はどうでしょうか。


公益社団法人日本獣医師会 会長 藏内 勇夫氏

藏内 むやみに抗微生物薬を投与すると細菌がそれに打ち勝とうとして耐性を身に付けて効かなくなります。薬剤耐性菌が肉に残ったり、排せつされて拡散したりして人間の体内に取り込まれると、抗微生物薬治療が難しくなる恐れがあります。適切な飼養管理を行い、抗微生物薬をなるべく使わずに健康な家畜を育てることが大切です。
 アジアでは抗微生物薬の使用が極めて問題になっています。来年私が会長に就任予定のアジア獣医師会連合(FAVA)に、薬剤耐性委員会を作りました。日本の知識や技術を伝えて薬剤耐性の問題を解決したいと考えています。


――三番目の「環境保護」についての取り組みをお聞かせください。


服部 まずカーボンニュートラルをはじめとする地球温暖化対策です。太陽光、風力発電などの再生可能エネルギーや、新エネルギーとして注目される水素、中でも再生可能エネルギーから生み出される水素の活用を進めます。併せて電気自動車、燃料電池自動車の普及とそのためのインフラ整備や、森林保全、都市緑化に取り組みます。
 二番目は生物多様性の保全です。野生鳥獣の適正な保護管理、環境影響評価制度の適切な運用、絶滅危惧種が生息する里地里山の保全再生、希少野生動植物の保護回復も必要です。
 三番目は水や土壌の保全です。公共用水や下水、地下水を常に監視することが必要です。地域の特性に応じて下水道や浄化槽を整備して適切な汚水処理を行う他、汚染土壌の除去・管理にも取り組み、健康的な生活環境を確保します。

――ワンヘルス実践の啓発基盤整備について伺います。

服部 子どもたちに対する教育が大切です。県では、小中高校生向けリーフレットを作成しました。このリーフレット配布をきっかけとしてワンヘルス教育を進めます。
 また、中核拠点として、県の保健環境研究所と、新たに設置する動物保健衛生所が連携した「ワンヘルスセンター」を作りたいと考えています。保健環境研究所は建て替えの基本計画を策定中で、ワンヘルス推進に必要な機能を加えます。動物保健衛生所は、既存の家畜保健衛生所に野生動物や愛玩動物に関する検査、監視機能を持たせることを検討しています。またアジアを視野に入れた広域的な「アジア新興・人獣共通感染症センター(仮称)」を九州に設置するよう、九州各県と連携して国に要望します。


小中高校生向けリーフレット


One Health「人と動物と環境の健康はひとつ」


――ワンヘルス推進への決意をお聞かせください。

藏内 ワンヘルスはこれからの獣医師の活動の中心的なものとなります。2010年に「動物と人の健康は一つ。そして、それは地球の願い」との活動指針を掲げました。人と動物が共存する社会づくりが国民生活の安全安心、社会の安定や地球環境保全にもつながります。獣医師は間接的に人の健康を支えていることを念頭に置いてワンヘルスの実践に取り組みます。来年、福岡市で開催される第21回アジア獣医師会連合大会を成功させ、ワンヘルスの理念と実践をアジアにも普及させたいと思います。

横倉 新型コロナはワンヘルスの考えに基づいて解決しなければなりませんし、次の感染症も起こり得ます。獣医学、医学が協力して対応し、ワンヘルスを実践する必要があります。感染症は、各人がしっかりと注意を払うことが大切です。生活の中で注意すべき事柄について積極的に情報発信をしたいと考えています。

――県民の皆さんにお伝えしたいことをお願いします。

服部 新型コロナとの戦いには必ず打ち勝ちますが、次の感染症に備えるため、ワンヘルスの取り組みを加速させ、福岡県がワンヘルスの世界的な先進地となることを目指します。そのため、「ワンヘルスセンター」を整備し、世界のトップクラスの研究者が集う国際会議を開催し、ワンヘルスの取り組みによる課題の解決や、研究成果などを世界に向けて発信していただきます。こうしたことを通じて県民の皆さんの命と健康、動物と環境の健康を守り、健康な地球を次世代の子どもたちに引き継いでいきたいと思います。

(聞き手は読売新聞西部本社 社会部次長・滝下晃二 )


鼎談の模様(感染防止対策を行い実施いたしました)


ご挨拶

福岡県議会 議長 秋田 章二氏

 2016年、日本獣医師会の藏内会長と日本医師会の横倉会長(現名誉会長)のご尽力により、「第2回世界獣医師会-世界医師会"One Health"に関する国際会議」が北九州市で開催され、ワンヘルスの実践に向けた医師と獣医師の協力関係を強化する「福岡宣言」が世界に向けて発信されました。
 この国際会議の前後から、ワンヘルスの理念に対する県議会の関心が非常に高まり、県議会の本会議や特別委員会でも、頻繁に県のワンヘルスの取り組みに関する質疑が行われておりました。
 そのような中、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが発生し、県議会内で、ワンヘルス実践への取り組みを加速させなければならないという機運が一気に高まり、昨年6月には、「人獣共通感染症への対応力の強化に関する決議」が全会一致で議決されました。
 この決議に基づき、県議会で条例案の検討を重ね、昨年12月、議員提案により「福岡県ワンヘルス推進基本条例」を全国に先駆けて制定いたしました。
 県議会では今後も、服部誠太郎福岡県知事と力を合わせて、県の取り組みの指針となる行動計画の策定や、ワンヘルスを実践する拠点の整備などの取り組みを進め、本県がワンヘルスの世界的先進地となることを目指してまいります。
 

ワンヘルスフェスティバル開催

 地球を守り、人も動物も健康に暮らすために一人ひとりができることを考える「ワンヘルスフェスティバル」が、11月14日(日)、九州芸文館(福岡県筑後市津島1131)で開かれます。ワンヘルスの将来を考えるトークショーやパネル展、クイズラリーなどを予定。詳細はホームページでご確認ください。



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