間脳下垂体腫瘍の手術技法が大きく進歩 福岡脳神経外科病院の矢野茂敏副院長に聞く

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記事 INDEX

  • 下垂体は「ホルモンの司令塔」
  • 内視鏡と4K映像による手術が進化
  • 大腫瘍には2方向から同時手術

 自律神経の中枢と言われる間脳は、私たちの体温や食欲、睡眠などを正常に保つ役割を果たしています。その間脳の中で「ホルモンの司令塔」と呼ばれる下垂体に腫瘍が出来ると様々な症状が表れます。近年、鼻腔から内視鏡を入れて、4K映像を見ながら摘出する手術技法が大幅に進歩しています。大きな腫瘍には鼻腔と頭蓋の2方向から同時に手術し切除できるようにもなりました。最前線で治療にあたっている医療法人光川会福岡脳神経外科病院(福岡市南区)の矢野茂敏・副院長兼脳神経外科部長に伺いました。

下垂体は「ホルモンの司令塔」

――間脳下垂体とはどのような器官ですか?

 間脳は大脳に包まれた場所にあり、視床、視床下部、松果体(しょうかたい)、下垂体という部位があります。私たちの意識や感覚、自律神経の働きを調整し、体温や食欲、睡眠などを正常に保つ役割を果たしています。

 下垂体は視床下部にぶら下がっている約1センチの器官です。成長ホルモンをはじめ甲状腺や副腎皮質にホルモンの分泌を促すホルモンなど計8種類を出し、「ホルモンの司令塔」の役割を果たしています。下垂体はこれらのホルモンを出す細胞と出さない細胞がたくさん集まって一つの組織を作っています。


――下垂体腫瘍の症状を教えていただけますか?

 下垂体にできる腫瘍は基本、すべて良性ですが、進行すると死につながるケースもあります。

 ホルモンを出す細胞が腫瘍になるとホルモンが過剰に出てしまいます。例えば、成長ホルモンが多く出ると、体が大きくなったり、先端巨大症と言って手足が大きくなったり、太ったりします。プロラクチンというホルモンが増えると女性の月経が止まることがあります。

 一方で、ホルモンを出さない細胞が腫瘍になると、周囲のホルモンを出している細胞を圧迫するためにホルモンが出なくなります。吐き気や食欲低下などの症状が出たり、体がだるくなったり、やる気が起きなくなってきます。ひどくなると血圧が低下したり意識が悪くなることもあります。さらに腫瘍が大きくなると、下垂体の周囲にある視神経を圧迫して視野が狭くなるなどの症状が出てきます。

――診断はどのように行いますか?

 脳とは直接関係がないような症状が多いので、患者さんは当初、何科を受診して良いか分からず、眼科や耳鼻科、内科、精神科などを受診されます。それぞれの専門医が検査しても原因が分からず、最終的に脳神経外科での検査で間脳下垂体腫瘍と分かるケースが多いのです。

 下垂体腫瘍が疑われたら、下垂体をターゲットにMRIで撮影し、診断するケースが一般的です。通常は横からスライスして撮影しますが、下垂体は小さくて見えにくいので、頭を縦に写して真横からの角度で3ミリ程度の間隔でスライスして撮影すると見えやすく、確実な診断につながります。

内視鏡と4K映像による手術が進化

――治療にはどのような種類がありますか?

 手術と薬物、放射線の3通りありますが、良性でも手術で腫瘍を取るのが一番早い治療法です。

 下垂体腫瘍には多くの種類がありますが、最も多いのが下垂体腺腫です。下垂体はホルモンを出す粒々の集まりとイメージしていただきたいのですが、ハサミ、ピンセットなどを使って正常の細胞を残して悪くなった細胞をはぎ取るような手術を行います。20年ほど前までは唇の裏側を切って、持ち上げて顕微鏡で覗いて取る手法でした。しかし、15年ぐらい前から、内視鏡手術が導入され始めました。

 経鼻(けいび)的アプローチと言って、鼻の穴の奥に1センチ弱の穴を空け、直径2~4ミリのカメラやハサミ、ピンセットなどを2本ずつ計4本入れます。カメラが中に入ると、中の様子は画素数の大きな4K内視鏡を通じて55インチサイズのモニター映像で拡大して見ることができるので、大きさと色から腫瘍と正常部分の境界が明らかに分かります。解析度がどんどん良くなっていますし、正常部分を多く残せると、正常な機能をかなり保てますし、ダメージを受けた機能も回復します。


 また、磁場式ナビゲーションシステムという医療器械も登場して、手術器具の先端と腫瘍の位置が立体的に見えるので、手術の精度が高まっています。

 下垂体が出す8種類のホルモンの一部が出なくなったら薬で補充します。同じように放射線も手術では取り切れなかった腫瘍を破壊する時に使います。周辺には視神経とか内頸動脈など大切な器官がたくさんありますので、ピンポイントで慎重に確実に行います。

――手術はとても進化しているそうですね?

 下垂体以外でも頭蓋底部の広い範囲で経鼻的アプローチで拡大して見られるよう機器の性能が高まっているので、手術しやすくなっています。大きく切り開かないため、患者さんにはあまり体に負荷を与えません。傷も見えません。しかも、手術は全身麻酔をかけて3時間以内で終わり、以前2週間程度だった入院日数が現在は10日前後。4日で退院する方もいらっしゃいます。

大腫瘍には2方向から同時手術

――手術に関して最新の動きはありますか?

 手術に使う機器も進歩していますが、手術の方法も進歩しています。                                                                                        

 下垂体腫瘍が大きくなって、周辺の神経などを巻き込んでいる場合、経鼻的アプローチに加えて頭に1センチほどの穴を空ける経頭蓋(けいずがい)的アプローチを同時に行う複合手術が可能になっています。大きな進歩だと思います。

 それまでは経鼻的アプローチで半分くらい取って、腫瘍が下に下がってくるのを3~4か月待って再度経鼻的アプローチで取っていました。しかし、残った腫瘍が内出血を起こしたりするリスクがありました。


 経鼻的アプローチだけだと2人で操作しますが、同時で行うためには4人で行います。モニターの進化と外科医が手慣れてきたことが大きいですが、使う人が同じ技術レベルであることなどの条件があります。

 我々、脳神経外科医がこだわっていることは、①合併症なく安全に腫瘍を取る②下垂体の正常機能をできるだけ温存することです。手術に当たっては、患者さんに納得していただけるよう丁寧な説明を心がけています。

――コロナ禍で不要不急の外出を控える必要があり、病院への受診控えも多いと聞きますが、日ごろから気を付けるべきことは?

 視力障害など自覚症状が出て1年以上放置すると治りが悪いとの報告もあります。腫瘍が再発される方もいますので、できるだけ早期に発見されて適切な治療が行われることが大切です。病院側でも感染対策をしっかり行った上での診察や検査、手術を心掛けていますので、安心して受診していただきたいと思っています。

取材協力/福岡脳神経外科病院

住宅型有料老人ホーム「グランドホームG-1」


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