
公益社団法人福岡県看護協会・大和日美子会長
新型コロナウイルス感染症が世界に拡大して2年余り。コロナ患者の治療やワクチン接種に多くの医師や看護師が関わっています。保健師の奮闘も伝えられています。看護職はこのほか、医療の高度化に伴う看護の質向上や地域包括ケアシステムの中心的役割も期待され、今後も活躍の場が広がる職業です。5月12日の「看護の日」にちなんで、公益社団法人福岡県看護協会の大和日美子(やまと・ひみこ)会長に看護の仕事について伺いました。
INTERVIEW
コロナで実習に大きな影響
――実習の制限が多かったと聞きましたが、教育機関や医療機関の取り組みは?
感染者の急増により、臨地実習の直前の変更や中止が多くありました。調査では看護系大学の7割以上が変更を余儀なくされました。
看護学は実践・評価を繰り返しながら追究する実践科学。つまり、看護を実践し、患者さんの反応を評価してさらにいい実践に結びつける積み重ねです。しかし、この2年間は、患者さんをはじめ、ご家族、医師ら医療従事者とも十分なコミュニケーションを取る機会が十分ではありませんでした。
医療機関等では、新人看護師が最初からつまずかないよう多面的な支援をお願いしたいと思います。新人看護師が先輩看護師に同行し仕事を見て学ぶ「シャドーイング」を取り入れている病院もあります。先輩看護師の皆さんも真摯に後輩に向き合っていると聞きます。
感染管理リーダー 看護師を育成
――看護協会が特に力を入れた取り組みは?
協会の大きな仕事は、人材育成と働き続けられる職場環境づくり、地域の医療保健福祉活動推進の3本柱です。
その中でも2021年度は新型コロナに対応できる人材育成に力を入れた一年でした。
県の委託事業で、「感染管理リーダー看護師育成研修」を行いました。感染症の専門・認定看護師がいない中小規模病院や診療所の看護師約400人を対象に講義や演習で一人4日間、延10日開催しました。例えば、感染症の基礎知識、感染管理対策、院内の感染対策マニュアルの作成・改訂などを学んでもらいました。今年度も計800人を対象に開催する予定です。
その結果、2年前は「どうして良いか分からない」と戸惑いが多かったのですが、コロナへの対応がずいぶんと出来るようになったと思います。
潜在看護職を対象とした感染管理やワクチン接種の実技研修も行い、安心して現場に戻るサポートをしました。
士気高いコロナ看護の現場
――看護学科の志望者数の増減は?
看護職とは、国家資格の保健師と助産師、看護師の3職種と都道府県知事発行免許である准看護師の計4職種です。保健師や助産師の資格を取るには前提として看護師資格が必要です。
コロナ対応が看護職の疲弊につながっているのは事実ですが、コロナ患者を受け入れている病院では、コロナを理由に「やめたい」と言っている看護師はほとんどいないと聞きます。特にコロナ患者に接している看護師は「私たち以外に誰が患者さんを救えるのか」と使命感が強く、看護の力で今を乗り切ろうとしており、多くの感謝の言葉をいただいています。
同様に、看護学科の志願者数は一部「減った」という声もありますが、「変わらない」「増えた」という声も聞きます。福岡県内には、看護系大学が15校あり、看護職を目指すための学習環境が整っています。志願者は条件にマッチした大学を選んでいるように思います。
活躍の場が広がる看護職
――大学で看護を学ぶメリットについてお聞かせ下さい。
カリキュラムが今年度から改正され、看護師は97から102単位が必要になったため、3年間で履修するのが難しくなっています。改正のポイントは多様性への対応でありIT化、研究です。3年制が多い専門学校よりも4年制大学では多少余裕のある教育が可能で、学生はじっくり学ぶことができます。医療は日進月歩で進歩しており、高度化し、さらに少子高齢社会に対応して質も向上させていく必要があります。それに合わせて新しい看護を追究する必要があります。研究なしに発展はありません。
2024年度から適用される「医師の働き方改革」により、医師の分野のタスクシフト・シェアが求められます。そのためには高度な専門知識が必要で、看護師一人一人が質を向上させることが重要です。今後さらに、国際的な視点や言語スキルも求められると思います。
――看護の精神や将来の可能性、看護職を目指す方へのメッセージをお願いします。
看護職は医師とともに人の「生」と「死」に立ち会います。人の人生に関わり、影響を与え、人に寄り添い、社会に貢献できる仕事。健康で幸せな社会をつくる職業の一つです。
また、崇高な仕事であると同時に自分自身もその過程で成長させてくれます。常に学習しながら高みを目指すことができます。結婚、出産、子育てなどで職を離れても復帰できる生涯資格です。ぜひ看護職にチャレンジしてください。
高校生男女の看護体験動画でPR
――「看護の日」に向けた取り組みの概要をお聞かせ下さい。
看護職は女子高校生ではトップ3に入るなど人気の高い職種ですが、小中学生の間ではトップ10ぎりぎりくらい。そこで小中高校生や父母、学校の先生たち向けの動画を作成しました。高校生男女3名が看護を体験する内容で、服部県知事からもメッセージをいただいています。人が集まるイベントや式典は2年開催できていませんが、SNSなどで看護の魅力を発信しています。
WEBで動画公開中!! 現役高校生が『看護体験してみた』篇↓ほか
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