久留米絣を海外へ イタリア人社長が手がける新ブランド「Kimonissimo」

「Kimonissimo」を手がけるディサント・ダニエレさん

記事 INDEX

  • マスク不足のイタリアに
  • 現代に合わせたデザイン
  • 若い人の「かっこいい」に

 日本とイタリアの懸け橋をめざし、市場調査やブランディング事業を行う「ディサント」(福岡県大牟田市)が、福岡県・筑後地方の伝統的な綿織物「久留米絣(かすり)」で作ったマスクやネクタイを販売する「Kimonissimo(キモニッシモ)」プロジェクトを始めました。伝統を守りつつ、ビジネスや日常生活での使いやすさを考えたデザイン。久留米絣を海外に広めようと挑むイタリア人社長に話を聞きました。

マスク不足のイタリアに

 社長のディサント・ダニエレさんはローマ出身。政治経済の分野を担当する新聞記者でしたが、イタリアの政党の依頼を受けて日本に派遣されたことをきっかけに、2007年に移住します。2010年には、中小企業のイタリア進出を支援するディサントを設立し、やがて顧客の多い九州を拠点に活動するようになりました。


久留米絣との出会いを振り返るディサントさん

 久留米絣に出会ったのは、新型コロナウイルスの感染が広がった2020年。母国で入手困難になっていたマスクを取引先や知人に送ろうと、素材を探していたときに見つけ、プレゼントとして贈ったといいます。


久留米絣を織る工程

 「くくり」によって染め分けられた綿の糸が織りなす擦(かす)れた模様、木綿ならではの使い心地、100年以上前の機械を大事に使い続ける伝統――。工場を見学したり、職人に接したりするうち、久留米絣の魅力にはまったディサントさん。「この身近にあるおしゃれな素材を使って、外国人にもコンセプトが伝わる商品を作れないだろうか」と考え、プロジェクトがスタートしました。


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現代に合わせたデザイン

 生地は広川町の「坂田織物」のものを使用。久留米絣の商品はこれまで婦人服や土産品が中心でしたが、実家が靴関係の仕事をしていたというディサントさんらがデザインなどを選び、現代の日常生活で使いやすいものを商品化しました。久留米絣を育んだ地域の文化に"敬意"をはらい、すべての工程が県内で完結するようにしています。


デザインは約20種類

 2021年春にインターネットで販売を始め、今年2月からは欧米やアジアの主要国への発送も可能に。現在、20種類ほどのデザインがあります。ネクタイは通常の太さの「レギュラー」と細身の「ナロー」をそろえ、ビジネスからカジュアルまで様々なシーンに対応。マスクやハンカチは抗菌消臭効果のある生地を一部に採用しました。


ディサントさんの提案に刺激を受けている坂田さん

 織元の坂田和生社長も「私たちは作り手の目線でしか考えてきませんでした。こういう使い方があるんだというアイデアはとても勉強になります」と語ります。

若い人の「かっこいい」に

 日本国内からの注文がまだ多いそうですが、ディサントさんはコロナ禍が落ち着いたら、海外に赴いて久留米絣をPRするつもりです。スーツと一緒にコーディネートできるようなポケットチーフ、ストールといった新しい商品も構想しているそうです。


久留米絣の工場を見学するディサントさん(左)

 「買い手がどんどん減っていく中、伝統や技術をどう守って伝えていくかという点で、日本とイタリアは同じ課題を持っています」と語るディサントさん。「商品を紹介する際に久留米絣の歴史や伝統、織元の思いなども一緒に伝え、久留米絣を身に着けることはかっこいいと若い人に思ってもらえるようになれば」と願っています。



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