【ルポ】営業再開のパブに笑顔もどる 緊急事態宣言解除に喜び、安堵、政府への不満

記事 INDEX

  • 売り上げは宣言前の7割減
  • 自粛無視の店主の気持ち「理解できる」
  • 日没前にラストオーダー

 新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が解除された福岡県。多くの飲食店が営業を再開したり、酒類の提供を始めたりしている。福岡市博多区で自家醸造したクラフトビールを提供する醸造所併設のパブ「あすなろブルワリー」も22日、営業を再開。店内には客の笑顔が戻った。再開の一日を取材した。


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売り上げ7割減「ずっと不安でした」

 午後5時。店内にあかりが灯った。営業は5月11日以来、実に42日ぶり。今回の宣言期間中(5月12日~6月20日)はビールのテイクアウト販売のみ続けたが、売り上げは7割ほど落ち込んだという。

 「このまま店が続けられるか、ずっと不安でした。宣言解除が近づくにつれ、少しずつ前向きな気持ちになれました」。店主の村井真吾さんはそう語る。


緊急事態宣言が解除されて初めて客前に立つ村井さん

 オープンからほどなく常連客が姿を見せ始め、村井さんと笑顔で言葉を交わして互いの無事を確認。30歳代の女性客は「テイクアウトもしましたが、お店で飲むのとではおいしさが違う。正直、我慢も限界でしたから」と店の再開を喜んだ。

 この日の客入りは、取材中の記者を含めても10人。それでも村井さんは「素直にうれしいです。お客さんに来てもらえるか、不安でしたから」と心境を明かした。

ビール提供できなければ、閉めるしか…


あすなろブルワリーの外観

 あすなろブルワリーは大分県中津市出身のビール醸造家・村井さんが、2018年11月にオープン。村井さんは「エミレーツ航空」(アラブ首長国連邦)の客室乗務員として勤務し、退社してからドイツでビール醸造を学んだ異色の経歴の持ち主だ。

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 店内にはビール醸造用の約300リットル入りのステンレス製タンクが二つある。

 これで造られるのが、店がある地名「千代」にちなんだオリジナルビール「ちよ」シリーズだ。一番人気「ちよIPA」はホップのフルーティーな香りと軽やかな味わいが特徴で、何杯飲んでも飽きがこない。


グラスに注がれるクラフトビール

 地域の社交場としてにぎわいを見せていたが、今回3度目となった宣言期間中は酒類の提供自粛要請で、休業を余儀なくされた。

 「ブルワリーパブがビールを提供できなければ、店を閉めるしかない」


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自粛無視の店主の気持ち「理解できる」

 福岡県の調べでは、5月には県内の飲食店の1.2%にあたる313店が時短営業の要請に応じていなかったという。県は混雑が目立つなど感染リスクが高いと判断した福岡市内の計15店に、新型インフルエンザ対策特別措置法に基づき、要請に従うよう命令を出した。


テイクアウト用に準備した瓶ボトル

 あすなろブルワリーは酒類提供の自粛要請を守って宣言期間を乗り切った。ただ、村井さんは「期限を待たず通常営業に踏み切った店主の気持ちはよく分かります。多くの従業員をかかえる飲食店もある。店がつぶれてからでは遅いですから」と理解を示す。村井さんの手元には、当座の運転資金として福岡県に申請した感染拡大防止協力金が4月分ですら振り込まれていないという。

 40歳代の男性客は政府への不満をこぼす。「飲食店はかわいそうですよ。国の体裁、オリンピックのために犠牲になって」。翌日、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は大会会場での飲酒禁止を発表した。


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日没前にラストオーダー


「再開できたことがうれしい」と語る村井さん

 店を閉じていた間、村井さんは新しいレシピの開発や事業拡大に向けた関係者との打ち合わせなどに時間を費やした。「店舗でのビール提供だけでなく、家飲みやギフト需要も開拓する必要性を感じました」と通販事業にも目を向ける。宣言期間中に誕生した新レシピ「ちよゆずセゾン」は、福岡県豊前市産の柚子を加え、かんきつ系のさわやかな香りがすっと広がる。

 ラストオーダーは午後7時。福岡市内は日没前で外がまだ明るかった。「少しずつ以前の日常を取り戻していきたい。今日はひとまず再開できたことを喜びたいです」。マスク越しの村井さんの表情からは安堵感が見て取れた。店は時短要請に合わせ、午後8時に閉じた。


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