コロナ禍で話題の「物々交換」 実践する北九州のカメラマンに聞いてみた

 新型コロナウイルスによる消費の落ち込みで、にわかに注目を集めているのがお金を介さない原始決済「物々交換」だ。交換するのは「モノ」とは限らない。北九州市門司区のカメラマン・萩康博さんは飲食店が始めたテイクアウトやインターネット通販の商品を撮影し、それらの商品と撮影の「サービス」を交換している。萩さんに話を聞いた。(写真はいずれも萩さん撮影)


萩康博さん

1983年生まれ。北九州市小倉北区出身。「カシャッと舎」代表。会社員を経て、2017年からフリーで活動。2019年にリバーウォーク北九州(北九州市)などで個展「建設現場百景」を開催した。


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SNSで呼びかけ

 萩さんが物々交換しているのは、通称「ブツ撮り」と呼ばれる商品だけを撮影するサービスだ。ネット通販では、消費者は商品を実際に品定めできない。その分、写真で商品を魅力的に見せることが、消費者の購買につながりやすい。新型コロナウイルスの影響で、テイクアウトやネット通販に乗り出す飲食店が急増し、ブツ撮りの価値も高まっている。

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 萩さんは4月下旬にツイッターとフェイスブックで物々交換の案内を告知した。すると、1週間ほどで4件の撮影依頼が舞い込んだという。

 山口県下関市のゲストハウス「ウズハウス」は、新たに始めたネット通販のテリーヌ・ショコラなどの撮影を依頼した。ウズハウスは「ネット通販は商品写真が重要で、萩さんのおかげで販売開始から順調に注文が入っている。今はゲストハウスが営業できず、売り上げが落ちているので本当に助かっている」と喜んでいる。


萩さんが撮影したウズハウスの「テリーヌ・ショコラ」


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なぜ物々交換?

 物々交換を思い立ったきっかけは、フォトグラファーとして独立する前に遡る。その頃、なじみの飲食店と、ある契約を結んだ。「タダ飯と写真を交換してほしい」。今でもその飲食店の看板には萩さんの写真が使われている。

 新型コロナウイルスで、3月以降は仕事の依頼も昨年比で半減したという。政府の緊急事態宣言は5月末まで延長され、暗いトンネルの出口はまだ見えない。


「モンゴルカレー」(北九州市戸畑区)のテイクアウト写真

 ただ、物々交換の取り組みに手応えも感じている。「これまでは企業からの仕事依頼が多かったが、他分野に目を向けるきっかけにもなった。コロナ禍に苦しむ地域の情報発信に貢献できた充実感もある」と言う。さらには、美味しい物々交換は家族からの評判がいいそうだ。新型コロナが生んだ思いがけないチャレンジを通じ、コロナ後を思い描いている。


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「文章」と「写真」を物々交換


萩さん(右)と記者 ※インタビューはマスクを着用して行った

 今回の取材は、記者が萩さんに「写真と文章で『物々交換』できるか」と持ちかけて実現した。萩さんが「写真」、記者が「文章」を持ち寄り、記事を仕上げた。

 萩さんは2017年にフリーランスとして独立。自身が代表を務める「カシャッと舎」を設立した。これまで、中小企業からの依頼で、ウェブサイト用の写真を撮影することが多かったという。昨年7月には初の個展「建設現場百景」を開催した。

 飲食店との物々交換で撮影した写真など、作品を紹介する。



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