なんで自粛警察しちゃうの?「世間」を研究している先生が教えてくれた

「世間」を自覚して冷静に

――私たちはどんなことに注意して生活すればいいのでしょうか。

 「世間」に生きていることを自覚する必要があります。「世間」には負の側面があります。太宰治の『人間失格』では、「世間が許さない」ととがめられた主人公が「世間というのは、君じゃないか」と、心の中で反論するシーンが描かれています。誰しも経験があるでしょうが、大きな力を借りて自分の主張を通そうとすることがあります。「自分が言ってるんじゃない。世間一般がそう言ってるんだ」とね。冷静に自分を振り返ることが大事です。

――メディアにも自制心が必要です。

 そうですね。ですから、メディアもできるだけ冷静に行動してほしい。パチンコ店の問題にいたっては、メディアも一緒になってパチンコ店をたたきました。取材しているパチンコ店の向かいで飲食店が営業していたらどうしますか。冷静に考えると、ちょっとおかしいですよね。

 つまり、メディアも「世間」を意識し、「空気」を読んで報道しているわけです。メディアは「空気」を醸成し、増幅させる影響力があります。ですから、冷静な報道が求められます。

――新型コロナウイルスは日本の「世間」を変えるでしょうか?

 日本の「世間」は1000年以上、生き続けています。明治維新でも、太平洋戦争でも、東日本大震災でも、どんな体験をしても日本人は根っこの部分で変わっていません。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」が日本人気質です。

 新型コロナによって、リモートワークが可能になり、いろんな無駄に気づいた社会人は多いはずです。でも、個々人がそれに気づいたとしても、最終決定権は「空気」にあります。そもそも、リモートワークが全国に広がったのも「空気」による決定があったからこそ。コロナ以前に戻ろうとする「空気」が顔を出すと、抗うのは大変ですよ。

 「世間」には良い面と悪い面があります。諸外国と比べて日本の治安が良いのは「世間」があるからです。ですから「世間」や「空気」の存在を意識して、もう少し「社会」の支配域を広げる努力をすべきです。新型コロナウイルスはその契機にすべきなのです。


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