過去の疫病からコロナを考えよう 福岡市博物館で「やまいとくらし」展

明治時代に流行したコレラの患者を病院へ運ぶ様子を描いた絵
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福岡市博物館(福岡市早良区)で、過去に広がった伝染病と当時の対応を紹介する特設展示「やまいとくらし~今みておきたいモノたち~」が行われています。展示は11月29日まで、前期、中期、後期に分けて続きます。8月30日までの前期展示では、100年以上前の感染防止策を記した文献や、新型コロナウイルスの影響で展示の機会が失われた資料などを見ることができます。
こんな時だからこそ
今回の展示は、過去の人々の伝染病への向き合い方を学び、新型コロナが猛威を振るう現在の参考にしてもらおうと企画されました。常設展示室の一角に「やまいとくらし」のコーナーが設けられています。
会場では、伝染病と暮らしについて様々な視点から学べます。企画を担当する学芸課の野島義敬さんは「過去の資料を読み解くと、現在と共通する対策をしているものもあります。今回のコロナ禍を乗り越えるヒントにしてほしい」と話しています。
現代にも通じる対策
前期展示では「伝染する病に向き合う」をテーマに、スペイン風邪(大正時代)やコレラ(明治時代)、天然痘(江戸時代)に対して福岡で取られた対策などを紹介しています。
大正時代の新聞記事には、「魔風の如き流行感冒 官衙学校会社半休の有様」との見出しがあります。「感冒」とは風邪を指す言葉です。当時、スペイン風邪は「流行性感冒」や「悪性感冒」と呼ばれ、マスクを着用し、会話をする際には距離を取ることが推奨されていました。記事からは、学校を休校したり会社を半休にしたりして、人と人の接触機会を減らしていたことが分かります。
また、幕末期の商人が書き残した記録によると、当時の福岡藩主・黒田長溥は天然痘を抑えるために予防接種の普及を図りました。蘭学など海外の学問を取り入れていた藩や識者は、疫病に対して先進的な施策を考えることができたそうです。
人同士の接触を減らすことや予防接種など、現在も有効とされる取り組みは100年以上前から行われていました。野島さんの言うように、「現在と共通する対策」は確かに昔からあったようです。
「外出自粛」をしたモノも展示
新型コロナの影響により、各地の博物館・美術館で計画されていた企画展が延期・中止となり、福岡市博物館から貸し出される予定だった資料も展示の機会が減りました。前期展示では、そうした品々も紹介しています。
本来なら東京五輪・パラリンピックで盛り上がるはずだった今夏。福岡県内の施設では五輪に関する展示が企画され、1964年の東京五輪を記念して作られた絵はがきも福岡市博物館から貸し出す予定でした。新型コロナで展示が見送られた資料も、この機会に会場で目にすることができます。
「やまいとくらし」は9月1日から中期展示に切り替わり、「みえないものと生きる―ウチとソトにいるもの」をテーマに、病気を鎮めるための人々の祈りに関する資料を10月18日まで紹介します。後期展示(10月20日~11月29日)のテーマは「疫病と歌舞伎」を予定しています。
イベント名 | やまいとくらし~今みておきたいモノたち~ |
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開催日 | 2020年7月21日(火)~11月29日(日) ※月曜休館(9月21日は開館して23日休館、11月23日は開館して24日休館) |
開催場所 | 福岡市博物館(福岡市早良区百道浜3-1-1) |
開催時間 | 9:30~17:30(入館は17:00まで) |
料金 | 一般:200円/高校・大学生:150円/中学生以下:無料 |
公式サイト | やまいとくらし~今みておきたいモノたち~ |