1メートル58センチの「一寸」レスラー 8月11日にデビュー戦

先輩レスラーとの模擬試合に挑む中野選手(右)

 福岡市を拠点に活動するNPO法人「九州プロレス」に6年ぶりの生え抜きプロレスラーが誕生した。福岡県嘉麻市出身の中野蒼天(そら)選手(19)。身長1メートル58で九州のプロレスラー最小とみられ、リングネームは「一寸蒼天(いっすんそら)」。8月11日にデビュー戦が予定されており、中野選手は「体は小さいが気持ちでぶつかっていき、見る人に元気を届けたい」と意気込んでいる。

 父の勧めで6歳で柔道を始め、中学、高校の部活動でも続けた。ただ、成績は伸び悩み、挽回を期して臨むつもりだった高校最後の大会も、新型コロナウイルスの影響で軒並み中止になった。不完全燃焼のまま進路に悩んでいたが、コロナ禍の休校期間中に見たプロレスの試合が転機になった。「いろんな技を繰り出して戦う姿に勇気をもらった。鍛えてきた体をいかして、自分が勇気を与える側になりたい」と、プロレスラーへの道を志すと決めた。

 練習環境が充実している点や地域密着型であるところに魅力を感じた九州プロレスの門をたたき、高校在学中の2020年10月に入門試験に合格。卒業後の21年3月末に寮に入り、プロレスラーを目指して、先輩の野崎広大選手(24)と共同生活をしながら練習に明け暮れる日々を送ってきた。

 毎日早朝10キロのランニングや筋力トレーニング、プロレス用の技術練習をこなし、寮でも体を作るための食事作りにも精を出した。入寮時に75キロだった体重は84キロまで増えた。


筑前理事長と中野選手


 7月上旬のプロテストでは、受け身に失敗して不合格。2度目のチャンスとなった7月19日は、1メートル70、135キロの体格を誇る野崎選手と模擬試合も行った。ボディースラムや逆エビ固めなどの技を食らいながら何度も立ち上がり、「得意技」のドロップキックで反撃するなど、積み重ねてきた1年3か月の成果を見せ、合格を手にした。

 「九州ば元気にするバイ!」が理念の九州プロレスは例年、50回程度の試合に加え、高齢者施設や保育園などへの慰問を続けてきた。ただ、コロナ禍で興行回数は半減、慰問も自粛する状況が続いていることもあり、中野選手のプロテスト合格は「団体にとってもファンにとっても明るいニュース」と歓迎。筑前りょう太理事長(49)は、「体のサイズは彼の宝物。努力次第で世界でも活躍できるし、彼にしかできない元気の届け方をしてほしい」と期待を込める。

 デビュー戦は福岡アイランドシティフォーラム(東区)で11日に開かれる団体の14周年記念大会に決まった。中野選手は、「将来的には団体を引っ張っていける選手になれたらと思う。まずはデビュー戦で、相手が大きくても強くても諦めない姿を見せたい」と力強く語った。


advertisement

この記事をシェアする