北九州市小倉北区の旦過(たんが)市場付近で8月に起きた火災で焼失した老舗映画館「小倉昭和館」が11月27日、同区のリーガロイヤルホテル小倉で火災後初となる特別上映会を開いた。館主の樋口智巳さんは笑顔で観客を出迎え、「これを第一歩とし、再建を目指して前に進めると思う」と力を込めた。
弁士と伴奏付き
上映会は活動弁士、伴奏付きで火災前から計画。一時は中止に傾いたが、樋口さんは「映画の歴史でもある弁士付きの上映は少ない。ぜひ見てほしい」と会場探しや機材確保に奔走し、開催にこぎ着けた。
上映会で樋口さんは約170人の観客を前に、「火災で全てを失った街の小さな小さな映画館の再建は無謀かもしれない。迷い続けたけれど、一緒に新しい昭和館をつくっていただけませんか」とあいさつ。観客は無声映画「忠次旅日記」(1927年)「チャップリンの番頭」(16年)を鑑賞し、弁士の澤登(さわと)翠さんの迫力ある語りと、ギター、フルートの調和した音色を楽しんだ。
約20年前から昭和館に通ってきたという同市門司区の会社員女性(61)は「明るく迎えてくれた樋口さんの姿を見てほっとした。再建に向け、できることは何でもお手伝いしたい」と話した。
特別上映会は月1回程度開く予定で、次回は12月10日に同市立大で行われる。