【熊本】内村光良さん、古里・人吉を撮る

人吉市役所での撮影で、役者としてリハーサルする内村さん


 熊本県人吉市出身でタレントの内村光良さん(58)が、九州豪雨の爪痕が残る人吉球磨を舞台に短編映画を制作している。ダンサーを目指して上京を夢みる女子高生の青春ダンス映画を通して、復興途上にある古里の今を全国に伝えたいという。


映画「夏空ダンス」来年公開

 タイトルは「夏空ダンス」。架空の「人吉高校ダンス部」の仲間たちとダンスに打ち込むヒロインの青春を描く。内村さんが監督・脚本を担当し、主人公の父親である市役所職員役で出演もする。「コンフィデンスマンJP」などの映画制作会社「FILM」(東京)が手がけ、2023年の公開を予定している。

 20年7月の九州豪雨で人吉市の実家は床上浸水し、90代の両親は屋根裏に避難したという。直後に駆けつけ、青井阿蘇神社周辺などの変わり果てた姿に衝撃を受けた。復興で新しい建物ができる一方、更地も残る今の風景を映像で残したいという思いが募った。

 撮影は8月中~下旬に行われた。高校卒業まで人吉市で過ごした内村さんが利用した村山公園や被災した肥薩線、仮設住宅でのダンスシーンもある。


監督として撮影に臨む内村さん(「夏空ダンス」製作実行委員会提供)

 撮影には市なども協力。エキストラの募集には市民ら約600人が応募した。家族4人で撮影に臨んだ参加者は、豪雨で長男と長女が通う幼稚園が浸水したといい、「子どもたちが無事成長している姿を見てほしい」と笑顔で話した。

 同月20日、市役所の撮影現場を報道陣に公開し、記者会見した内村さんは「今は復活しているとも、してないとも言えない状況。この2年後という状況を撮りたいと思った。日本中の人に見てほしい」と語った。

会見で語った制作への思い

 内村さんは記者会見で、制作への思いを語った。主なやりとりは次の通り。

 「水害以降、この街の今を撮りたいという思いが強くなった。変わり果てた街を見てがくぜんとしたが、コロナ下で手伝うこともできなかった。人吉球磨の皆さんと一緒に思い出の地で撮るのは本当に感慨深い」

 ――作品の見どころは。

 「私の思い出の場所で撮っている。村山公園は遠足とかデートとか思い出のある所。グラウンドが仮設住宅になっていて、そこでもダンスをした」

 ――豪雨から2年たち、古里の姿はどう映るか。

 「帰る度に思うのが汽車がないってこと。(流失した肥薩線の)第二橋りょうで撮影したが、当時のままの姿を見ると悲しくなる」

 ――どういう方に見てほしいか。

 「純粋な復興映画ではなく、離れていく人など現実的なものを描いている。日本中どこも線状降水帯で、我々と似たような境遇を経験された方がいっぱいいる。多くの人に見てほしい」


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