【山口】県警音楽隊ヒーロー「百討官パトル」誕生

 山口県警察音楽隊に、初のご当地ヒーローが誕生した。その名も「百討官(ひゃくとうかん)パトル」。悪の秘密結社とは戦わないが、音楽隊の生演奏をバックに、寸劇でうそ電話詐欺などの犯罪被害を防ぐべく、奮闘している。


演奏会で寸劇を披露する百討官パトル

 「その悪意、許さん!」。9月3日、周南市文化会館で行われた演奏会。約1300人の観客の前で、パトルが市役所の職員を名乗る男に還付金があるとだまされ、ATMでお金を振り込もうとする高齢女性を必死に止めた。女性にはたかれたり、振り払われたりされる様子が笑いを誘い、音楽隊も、電話の操作音や足音などを楽器で再現して劇を盛り上げた。

 パトルの生みの親は、音楽隊員で県警教養課の井上航巡査長(32)。ヒーローの名前は、あらゆる犯罪被害を防ぎたいとの思いを込め、「百の悪を討つ警察官」と「パトロール」から取った。

 誕生のきっかけは、音楽隊の田中秀明楽長から昨年春、「観客に楽しんでもらうため、何かできないか」と案を求められたことだった。

 井上巡査長は、2019年頃まで宇部署の交番に勤務。パトロール中の無線で、犯罪被害の連絡に義憤を覚えたことが脳裏によみがえった。

コスチューム製作は妻

 もともと特撮ヒーローが好きで、休日には、妻の奈々さんと小学生の娘2人と一緒にコスプレを楽しんできた。「笑い、楽しみながら自衛の方法を学んでもらいたい」と、自作のヒーローが登場する寸劇の企画書を、わずか2日で書き上げた。

 コスチュームの製作は、奈々さんが担当。見た目と動きやすさを両立させるため、ウレタン素材の平らな板を細かく切ってつなげ、約1か月半かけて作り上げた。

 デザインには細部までこだわった。一番の見せ所は、額の旭日章(警察章)。上部を長くすることでかぶとの前立てのようにし、格好良さも演出した。「一目で警察のキャラクターと分かりつつ、一人のヒーローとしても親しんでもらいたい」と井上巡査長は話す。

 昨年12月、岩国市でのクリスマスコンサートでデビュー。周南市での登場が3度目だ。

 田中楽長は「幅広い年代に親しまれ、事件事故の防止や啓発に一役買ってほしい」と、新たなヒーローに期待する。

 次の"出動"は11月の予定。井上巡査長は「精力的に活動して、いずれは県民誰もが知っているキャラクターになればうれしい」と話している。


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