住宅地再生のモデルに ひのさと暮らしLABOシンポジウム

Sponsored by 特定非営利活動法人まちづくり宗像 PR

まちづくりを一緒に考えたシンポジウムの参加者たち

 高度経済成長期に全国各地で建設され、施設の老朽化や住民の高齢化といった課題に直面する大規模住宅団地。福岡県宗像市の日の里地区は地域の活力を取り戻そうと、官民連携による団地再生に取り組んでいます。日の里地区の事例に学び、まちづくりの進め方を考える「ひのさと暮らしLABOシンポジウム」が2月10、11日、福岡市中央区の読売新聞西部本社よみうりプラザで開かれました。

地域再興!日の里の挑戦

 同地区に広がる日の里団地は、現在のUR都市機構が1971年に開発しました。半世紀を経て様々な課題が深刻になる中、宗像市と民間事業者が2020年3月、まちづくりに関する連携協定を締結し、「さとづくり48プロジェクト」がスタートしました。

 集合住宅9棟を解体して宅地分譲し、1棟(48号棟)は生活利便施設「ひのさと48」に改修して地域活性化のハブ(軸)として活用しています。施設には、ビール醸造所やコミュニティカフェ、認可保育所などが入り、地域の新しいつながりを生み出す場にもなっています。


団地1棟をリノベーションした「ひのさと48」


 現在は団地内にとどまらず、地区全体や市の活性化に向けて活動範囲を拡大。そのような団地再生の取り組みをさらに加速、波及させていこうと、特定非営利活動法人まちづくり宗像では、国土交通省の「官民連携まちなか再生推進事業」を申請、採択されました。取り組みの一環で、官民参加の組織「ひのさと暮らしLABO」が発足。不動産や住宅のあり方、地域産業との連携、子育て環境など様々な視点から郊外住宅地を再生するモデルづくりを目指しています。


地元住民が手応えを語る

 今回のシンポジウムは、これまでの成果や課題を共有し、日の里の取り組みをさらに推し進めるとともに、地域再生の機運を広げていこうと企画。トークセッションや基調講演、ワークショップなどを通じてまちづくりを考えました。


トークセッションに臨む(左から)黒川氏、中川氏、木村氏


 宗像市地域学校協働活動推進員の木村政一氏、日の里地区コミュニティ運営協議会の黒川貞一郎会長、まちづくり宗像の中川眞一理事長の3人によるトークセッションでは、住民の視点から地域の変化を報告しました。


 木村氏は「日の里では子どもから高齢者まで住民が一緒にまちづくりにかかわっている」と紹介。ひのさと48の壁面に設置されたクライミングウォールは、地元小中学校の総合学習でのアイデアから誕生したもので、「子どもたちの夢の実現に向けて取り組んだことが、全国の人に注目されている」と話しました。


熱心に聞き入る参加者


 黒川氏は、住民の意識に変化が生じていることを強調。「子どもたちを巻き込みながら、地元の良さを住民に伝える活動を意識している。子育て世代も増え、安心・安全なまちが知られるようになっている」と手応えを語りました。


人づくりで笑顔のまちに

 基調講演では、福岡地域戦略推進協議会の石丸修平事務局長、UR都市機構の福田伸二・神奈川エリア経営部長、第一プログレスの堀口正裕・代表取締役、神奈川県庁の脇雅昭理事が順に登壇。4人は域外の立場から地域活性化のヒントなどを示しました。


講演する福田氏


 日の里団地の再生プロジェクトにも携わった福田氏は「地域課題を先取りしている住宅地が団地」と指摘。団地の広場でイベントを開いたり、空き室をコワーキングスペースにしたりして、関係人口の拡大に取り組む全国各地の事例を紹介し、「住む人の力や活動を生かしながら活性化していくことを目指している」と力を込めました。


 講演した4人はトークセッションにも臨みました。「まちづくりとは?」の問いに対し、福田氏は「昔はハードだと思っていたが、大事なのは人づくり。人づくりから生まれる笑顔のことだと思う」と思いを語りました。


地域の活性化について熱く語る(左から)脇氏、堀口氏、福田氏、石丸氏


 地域の「活性化」についても議論。脇氏は「関わる人の満足度が高い状態を指すのでは」とし、石丸氏は「地域外の人と交流して自分たちの良さを発見するなど、いろいろ活動しながら自分たちがどうなりたいかを考えることだと思う」と話しました。


まちづくり宗像の中川氏


 まちづくり宗像の中川氏は「貴重な意見や事例を聞くことができ、新たなアイデアも生まれそう。ひのさと暮らしLABOの事業を一緒に盛り上げる人を増やしていきたい」と、シンポジウムの手応えを述べました。


都市再生学会のキックオフ宣言

 今回のシンポジウムの終わりには、千葉商科大学の藏田幸三准教授と宗像市都市再生課の内田忠治課長が登壇。日本初のまちの担い手(PLAYER)による会の設立を宣言しました。藏田氏は「大都市、地方都市、集落などいろいろな人々が暮らしているまちに対して、主体的に行動、実践、関係しながら“いま”をより良くしようとすることを活動のど真ん中に据えた会にしたい。学ぶ集まりとしての会を含め、楽しんで集う会という思いも込めて」と熱く“楽会”への参加を呼びかけました。


会への参加を呼びかける蔵田氏(左)と内田氏


 【主催】特定非営利活動法人まちづくり宗像、株式会社大凧
 【後援】宗像市、一般社団法人よんなな会
 【特別協力】福岡地域戦略推進協議会


この記事をシェアする