IT化が進む医療現場 「求められる看護の心」

Sponsored by 『看護の日』大学連合 PR

公益社団法人 福岡県看護協会 大和日美子会長

 新型コロナウイルス感染症が5類に移行して1年余。社会は「コロナ前」に戻りつつありますが、日本は少子・超高齢・多死杜会のまっただ中にあり、医療や福祉の最前線で働く看護職の役割は以前にも増して重要になっています。「看護の日」(5月12日)と「看護週間」(12~18日)にちなんで、看護職の働きがいや将来について公益社団法人福岡県看護協会の大和日美子(やまと・ひみこ)会長に語っていただきました。

コロナの影響 今も実習不十分

――新型コロナの拡大以降の取り組みを教えてください。今は「コロナ前」の状態ですか?

 コロナ禍では、多くの教育機関は学内に感染対策チームを立ち上げ、教職員・学生に感染症の正しい知識を周知するとともに、ITを活用した教育体制(オンライン授業やシミュレーション教育)を強化しました。昨年、新型コロナは5類感染症に移行しましたが、完全収束した訳ではありませんので、今も教育機関・医療機関ともに一部感染対策を継続しながら対応している状況です。福岡県看護協会では、昨年度「挑戦の軌跡—新型コロナウイルス感染症対応録ー」として3年間弱の取り組みを冊子にまとめました。あらゆる場で活躍する看護職の奮闘の記録がこの中に収められています。

 看護学生の臨地実習については、コロナが完全収束していないため計画通りに実施されていないのが現状です。十分な臨地実習を経験しないまま職に就いた新卒看護師は、医療現場に慣れるのに時間がかかります。看護師は、患者さんや医師をはじめとする様々な医療従事者とコミュニケーションをとり、顔を合わせて情報を共有しますが、SNSによる情報共有が得意な若者世代にとっては、それらがストレスのひとつになっています。

――福岡県看護協会が4年間に力を入れた取り組みと今後について教えてください。

 これまでは、コロナ対応に必要な看護職員確保が最優先課題でした。福岡県や医師会等と協力し、看護職員確保に関する事業を展開してきました。例えば、潜在看護職には、ワクチン接種や電話相談などの業務に従事してもらうことができました。その後、引き続き医療機関等に就職してもらう流れが理想でしたが、そこがうまくいっていません。潜在看護職には夜勤や時間外勤務が無いことを再就職の条件としている方が多く、医療機関とのマッチングが進まないのです。いま、夜勤問題は看護職の働き方改革としても重要な課題と認識しています。

 福岡県の看護師等養成状況·就職状況を見ますと、准看護師養成所や一部の看護師養成所で定員割れが続いています。看護大学の数は増えていますが、養成所の定員総数自体が減少しています。さらに、卒業後の県内就職率は6割程度に留まっています。看護師を目指す人を増やす、新卒看護師の県内就職者を増やすなどの対策を強化し、地域の医療提供体制を守っていかねばなりません。このため、今年度、当協会ではナースセンター業務を独立させ、看護職員確保を強化します。

ワーク・ライフ・バランスを大切に

――大和会長のこれまでの歩みについて教えてください。

 長崎県の高校を卒業後、看護専門学校に通って看護師資格を取得し、北九州市立病院に就職しました。―人の子どもを育てながら、小児病棟や外科系病棟で働き、管理職となる35歳まで三交代夜勤をしました。同市立看護専門学校長を経て、19年6月に県看護協会長に就任しました。

――看護の仕事において一番大切にしていること、思い出があれば教えてください。

 ワーク・ライフ・バランスを大事にしてきました。仕事と家庭の両立は大変ですが、病院が運営する保育所の利用や同僚・家族の協力など、子育ての期間は様々な支援を受けながら仕事を続けることができました。万年睡眠不足でしたが、大好きなバレーボールでストレスを解消し、体力を維持していました。

 子育てに続き、高齢となっていく父母のお世話もありました。子どもと孫も含め4世代で暮らした時期もありましたが、いつも誰かが家にいて、お互いに声をかけ話したり、遊んだり、様々な世代が一緒に生活するからこそ生まれる絶妙な相互作用が生まれていました。食事など大変なこともありましたが、仕事と家庭の両立が私を成長させてくれました。

チーム医療を学べる看護系大学

――4年制の看護系大学が増えています。大学で看護を学ぶメリットは何でしょうか?

 多くの看護系大学では、臨地実習ができない状況でも、シミュレーターやICTを活用した教育手法を使ったり、コミュニケーションを高めたりと、特色ある教育が進められています。

 また、医師や薬剤師、臨床検査技師などを育成する学科が併設されている大学では、医療の現場で協働する他職種の仕事の理解や、「チーム医療」について学べる機会が豊富にあります。

 このような中、臨床判断能力の強化と対象や療養の場の多様化に対応できるよう、看護師基礎教育はカリキュラムが改正され、22年度からは97単位から102単位と5単位増えました。学科・演習・実習・研究という構成を考えると、4年制大学でもゆとりがあるとは言えません。

 看護職の就業場所は、医療機関以外に訪問看護事業所や介護保険施設など地域に広がっており、タイムリーに判断・対応していく役割が期待される看護職にとって、学生時代の基礎教育は、これから大変重要となります。

――看護職の職種、キャリアアップの道について教えてください。

 看護職は、保健師と助産師、看護師、准看護師の4職種の総称です。

 看護系大学や専門学校を卒業すると、看護師国家試験の受験資格が得られます。さらに勉強すると保健師や助産師の受験もできて、養護教諭の免許も受けられます。資格を取得すると、医療機関や福祉施設、保健所など官公庁、企業の診療所、発展途上国の医療チームなど活躍の場が広がっています。

 医療の高度化や専門化に伴って、「感染症看護」など専門看護師、「救急看護」など認定看護師、あるいは特定行為看護師などキャリアアップの制度も整いました。

医療現場の変革 Z世代に期待

――看護職を目指す若い人に向けてメッセージをお願いします。

 Z世代には医療現場を変えてくれるという期待感を持っています。

 Z世代の柔軟な発想力で、他の職種と仕事や役割をシェアしたり、業務移管(タスク・シフト)したりすることが、可能になるかも知れません。これから更に進む少子化に向けては、必要な場所に看護職を配置する、その選択が重要になってきます。

 IT化が進めば進むほど、人間らしい心や生活が求められる。医療現場では、特に看護の手が必要になると思います。痛いとき、辛いとき、心が折れそうなとき、手を握ったり、身体をさすったりしてくれるのは、ロボットではなく、やはり看護師さんであってほしいですよね。



■ラッピングバスで「看護の日」PR



「看護フェスタ福岡2024」
5月18日(土) 10:30~15:30
会場/ナースプラザ福岡(福岡市東区馬出4-10-1)


 看護の心の普及・啓発と看護職への就業意識向上を目的とした「看護フェスタ福岡2024」が5月18日、福岡市東区の ナースプラザ福岡で開催されます。現役看護職の講演や白衣体験、進路の個別相談会、元アビスパ福岡選手のトークショーなどを通じて看護の魅力を体感できます。GohGan福山剛シェフと三原豆腐店のキッチンカーも出店します。また、15日には、看護の日・週間をPRするラッピングバスが福岡市内を巡回します。

イベント特設サイトはこちら




■看護系各大学の情報は公式サイトで



 日本赤十字九州国際看護大学
 純真学園大学
 福岡看護大学
 久留米大学
 帝京大学 福岡キャンパス


この記事をシェアする