読売新聞読者投稿「私の日記から」~涼
今年の夏も厳しい暑さが予想されます。読売新聞の読者エッセー欄「私の日記から」では、特別編として「涼」をテーマに投稿を募りました。日々の暮らしに涼しさを取り入れる工夫や、涼にまつわる思い出などをつづった3人の作品を紹介します。
家族に煮出すドクダミ茶
初夏になると、庭のあちこちに自生するドクダミがかれんな白い花を咲かせます。庭いっぱいに花が咲く頃、私はドクダミを摘んでひもで縛り、数日間、天日干ししてひと夏分のお茶を作ります。今年は先日、乾燥させたものを湿気を防ぐための保存袋に入れ、冷凍する作業を終えました。
毎朝起きるとすぐに、冷凍しているドクダミをやかんで煮出して、お茶を作っています。10年ほど前から毎年続けている日課です。朝のまだ涼しい時間帯にやかんを火にかけ、洗濯や朝食の支度をしながら、ぐつぐつとお茶が煮える音を聞いていると、夏が来たことを実感します。
やかんを温める火で部屋の温度も上がるので、早朝から暑い日には煮出す作業を面倒に感じることもありますが、冷蔵庫でキンキンに冷やしたお茶を家族がおいしそうに飲む姿を思うと、不思議と頑張れます。
暑さで疲れた体に、ひんやり冷えた一杯が染み渡る瞬間は至福の時で、疲れも乗り越えられそうだと感じます。今年も家族の笑顔を楽しみに、朝からドクダミ茶を煮出そうと思います。
(福岡市 篠原美香 47歳)
亡夫思い出すウッドデッキ
夫が亡くなって3度目の夏が巡ってきます。20年前に自宅の庭に作ったウッドデッキは、夫が毎年欠かさず防腐剤を塗ってくれていたお陰で今も使えます。庭仕事で汗をたっぷりかいた後の冷えたビールが何よりの楽しみで、2人で乾杯したものです。
多趣味だった夫は、仕事にゴルフ、陶芸、水墨画、そして庭仕事と人一倍元気でした。しかし、病には勝てず、88年の生涯を駆け抜けました。
ウッドデッキには、家族でのバーベキューや、孫たちのプール遊びなど思い出がたくさん詰まっています。夫が亡くなった後は私が防腐剤を塗っていますが、作業を終えた後、シャワーで汗を流す時の達成感と清涼感はたまりません。今年も暑さに負けず、庭仕事の後のシャワーを楽しみに、この夏を乗り越えたいと思います。
5月に夫がストックしていた防腐剤を使い終わり、少し寂しさも感じましたが、「あなた、まだもう少し頑張れそうですよ」と写真の夫に報告しています。
(山口県周南市 兼安浩子 80歳)
心のモヤが晴れた瞬間
私が涼を感じるのは、心の中のモヤモヤが消え、自分らしくいられる瞬間だ。
高校1年の時からソフトボール部で活動し、5月に引退した。ピッチャーをしていたが、夏の練習は暑くて日差しも強く、グラウンドに立つだけで体力が奪われた。思うような投球ができなかったり、試合でミスをしたりした時は焦りや悔しさでいっぱいになった。
そんな時はベンチに戻って水を飲み、青い空や雲を見上げると、心の中の熱が少しずつ冷めていくように感じた。ノートにうまくいかなかった点を書き出したり、チームメートに聞いたりすると考えが整理され、「切り替えていこう」と前向きな気持ちになれた。
練習後、自転車でチームメートとその日学校であったことを話しながら帰る何げない時間や、帰宅してシャワーを浴びた後に飲む冷たい麦茶も体と心を癒やしてくれ、涼しさを感じた。
忙しい毎日の中でイライラしたり、落ち込んだりすることもあるけれど、これからも日々の小さな幸せに目を向け、自分だけの「涼」を見つけていきたい。
(大分市 竹内蛍 18歳)
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