世界に誇る"地下水都市" 熊本市 清らかな水が育む文化と生活

企画

 蛇口をひねれば、天然の地下水があふれ出す――。熊本では日常の光景だ。熊本大学がある熊本市は、「地下水都市」とも呼ばれ、水道水を全て地下水でまかなっている。豊かな地下水の上に、熊本の文化や生活が成り立っている。

水の科学館 水が作り出す熊本の文化

 近年、半導体産業の集積でさらに注目を集めている地下水。「熊本市水の科学館」では、人と水の共生を体験しながら学ぶことができる。
 同館を訪れて注目したのは、豊かな水に育まれた様々な文化。豊かな地下水を使った清酒のおいしさは全国的に有名だ。
 「湧くからに 流るるからに 春の水」。熊本市に住んでいた夏目漱石が詠んだ句だ。熊本では、水に関する歌や俳句が多く生み出されており、昔から熊本の水は人々に親しまれていたことが分かる。

田んぼが育てる地下水 節水が守る未来

 地下水の秘密は田んぼにある。雨水がしみこみやすい「地下水かん養域」で、水田の果たす役割は大きいとされる。水の科学館によると、熊本市の江津湖は、加藤清正が堤防を築き、湧水を堰(せ)き止めたことで形成された、いわば人工湖だという。熊本の水の魅力をもっと知りたい人は、ぜひ同館を訪れてほしい。
 一方、熊本は水の豊かさから、節水意識が低い傾向があるとされる。熊本市の公式サイトによると、1人1日あたりの生活用水使用量は、九州の主要都市が約210リットルなのに対して、熊本市は約221~229リットル(2025年4~9月)と多い。「節水」とは、無駄な水を減らすこと。蛇口をしっかり閉めるなど、小さなことから水を大切にしていきたい。

熊本大学「学生リポート」
 読売新聞西部本社が熊本大学情報融合学環で実施した「プレゼンテーション実習」で、学生が取材・執筆した熊本にまつわる記事を掲載します。


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