ゆたかな海を体感する「むなかたSDGs教室」 学生記者が一日を取材~中編

企画

海岸のごみで作ったキーホルダーを手にする児童

 海の豊かさを体感し、自然の大切さを学ぶ「むなかたSDGs教室」。8月18日の午後の部は、福岡県立少年自然の家「玄海の家」(宗像市)近くの海岸が舞台です。昼食後の休憩で一息ついた子どもたちはビーチクリーンに取り組みました。同時に、キーホルダー作りで活用するため、海のごみを拾い集めることも目的の一つでした。

Mission.2 ビーチクリーン



海のごみでキーホルダー


 「海には、有害物質の運び屋のような微細なごみの一つ、マイクロプラスチックがたくさんあります」。講師役のシーソンズの権田幸祐代表が、深刻な海洋汚染の具体例を伝えます。



 権田さんは、後継者問題が深刻な漁業を盛り上げようと、仲間と一緒に団体を設立しました。「漁師たちによるごみ拾い活動」として海岸清掃やごみの分別を進めるほか、クラウドファンディングで資金を募って海を漂うごみの回収を進めるなど、精力的に活動しています。



 暑さで作業時間が短縮されましたが、海からの潮風が心地よく、猛暑を和らげてくれます。子どもたちは目を凝らして、小さくて色とりどりの漂流物を次々と集めていきます。「大きめのごみは波打ち際に、反対にマイクロごみは砂の中にあるよ」。権田さんが付け加えました。岩城琉登君(福岡市立姪北小5年)は「きれいな緑色のマイクロごみを拾ったので、これをキーホルダーにしてみたい」とうれしそうです。



 私も小さなごみが本当に多いことを実感しました。一方で、日ごろの清掃活動により、目立つような大きなごみは多くありませんでした。ボランティアの溝上志穂さん(香椎高3年)も「海の清掃だと思っていたのに、海岸はきれいで、ごみが少ないように感じました」と驚いていました。



 参加者全員での記念撮影を済ませ、「玄海の家」に戻りました。キーホルダー作りでは、準備された枠の中に小さなごみなどを散らし、速乾性の液体を流し込みます。デザインを整えながら硬化用のLEDライトで照らすと、ほどなくして透明感のある作品が完成しました。



 どの作品もカラフルです。装飾などに作者の個性が出ていて、各自のこだわりを感じます。石橋結人君(宗像市立河東小4年)は「砂と青色のラメを組み合わせ、砂浜と海をイメージしました」と、仕上がりに満足そうです。子どもたちは、ただのごみでも上手に活用すれば、美しく変化していく様子に目を奪われているようでした。



 権田さんによると、シーソンズは現在10人ほどで活動していて、平均年齢は約30歳。イベントを請け負った収入や寄付などで、活動に必要な資金を賄っています。催すイベントに漁師の皆さんが参加した場合、立場はボランティアではありません。業界の賃金を底上げするためにも、しっかりと対価を支払うそうです。



 今後の展望を尋ねると、権田さんは期待を込めて答えてくれました。「海でのごみ拾いは何かきっかけがあると楽しくなると思います。そして、拾った海ごみを収益化できるようになれば、活動はもっと広がっていくはずです」


(山下 和乃佳 記者)


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