ゆたかな海を体感する「むなかたSDGs教室」 学生記者が一日を取材~後編

企画

宗像の知られざる歴史に興味津々の児童たち

 豊かな海に触れ、自然の大切さを肌で感じる「むなかたSDGs教室」(8月18日)もいよいよフィナーレを迎えました。福岡県立少年自然の家「玄海の家」(宗像市)での最後の活動は世界遺産セミナー。古来から海の交通安全を守り続ける「沖ノ島」がメインテーマです。子どもたちはワークショップ形式で、地元が誇る「世界の宝」について、理解を深めたようでした。

Mission.3 世界遺産セミナー



郷土の宝をみんなで学ぶ

 「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」。宗像市とお隣の福津市にまたがる世界遺産の正式名称です。島と周辺の3岩礁をはじめ、▽中津宮▽沖津宮遥拝所▽辺津宮▽新原・奴山(しんばる・ぬやま)古墳群――の計8資産で構成。ユネスコの世界遺産委員会が2017年7月、登録することを決めました。


 中核となる沖ノ島は、九州本土から約60キロ離れた玄界灘に位置しています。古来から海上交通の守り神などとして、大切にされてきました。一般の人の上陸が禁じられていて、世界遺産の中でも珍しい存在だそうです。



 セミナーの狙いは、地元の良さを見つけ、歴史の楽しさを感じてもらうことです。講師役の宗像市世界遺産課の岡崇さんと、教育事業に携わる「ミエタ」(本社・東京)の島川竜也さんが導きます。2人は、島国の日本から人々が海を渡り、大陸の進んだ技術や文化を手に入れてきたこと、盛んになった交易のおかげで宗像に貴重な宝物が残されたことなどを紹介していきます。



 「それじゃ、1500年前を想像してみよう。手こぎ船に乗り、命がけで海を渡ると、どんなトラブルが起きると思う?」
 「海の守り神に見守ってもらいたいなら、どんな決まりを作ろうか?」


 問われた子どもたちは「(天候不良などに対して)神様に助けを求める」「ごみを捨てないこと」などと笑顔で応じていました。仕上げとして、自分自身が決めたルールをワークシートに書き込み、ペアになった相手に伝え合ってセミナーを締めくくりました。



 「皆さんはこれからの社会を切り開く主人公。ルールを大切にして成長してください」。参加者へ思いを伝えた島川さんは終了後、「宗像の歴史にはたくさんの魅力があります。歴史を少しでも好きになってもらえるとうれしいですね」と話していました。岡さんも「歴史だけでなく、いろいろなことに興味を持ってほしい」と、好奇心旺盛な児童の可能性に期待を込めました。



 閉会のあいさつで、赤田篤史・宗像市秘書政策課主幹は「学んだことを独り占めしておくのはもったいない。ぜひ、家族や友だちにも海の話をしてみてください。きれいな海を守っていきましょう」と呼びかけました。



 酷暑の中で長時間にわたって様々な活動に汗を流した子どもたち。辻彩葉さん(福岡雙葉小5年)は「ふだんできない体験ができて、夏休みの良い思い出になりました」と充実感に満ちあふれていました。名残惜しそうに帰宅する児童の後ろ姿がたくましく感じられました。





取材後記

 たった一日で行ったとは、信じられないくらい充実した内容でした。海の環境問題と真剣に向き合う方々のお話を聞くことができ、これまで自分が見てきた美しい海について考え直しました。人々が「きれいだ」と感じられる海を維持していくには、地道な努力と環境を守る継続的な活動が不可欠です。

 SDGsの目標の一つである海の豊かさを達成するために、自分自身で何ができるのか改めて考えています。日頃から意識づけておけば、▽プラスチックごみを出さないように、エコバッグやマイ箸などを生活に取り入れる▽ペットボトルや食品トレーをリサイクルする――といったことは手軽に実践できそうです。

 今、日本の漁業は危機的な状況と言われています。乱獲や違法ではない漁で捕獲した海産物や、国際的な認証制度(MSC認証、ASC認証など)の商品を賢く選べる消費者になりたい、と考えるようにもなりました。

 記事を読んだ皆さんが、海の豊かさについて考えるきっかけにしてもらえるとうれしいです。



 山下 和乃佳 記者



<学生ボランティアの感想>

泉 海斗さん​ (九州産業大3年)
子どもたちが上手く魚をさばいていて驚きました。命の尊さを実感しながらおいしく完食できました。無数のマイクロプラスチックを見ると、海のごみ問題は深刻。キーホルダー作りは、ごみを拾いながら楽しく制作できて良い活動だと思いました。

▽大藤 朋佳さん ​(九州工業大2年)
子どもたちと関わることができて楽しく過ごせました。自分自身も魚のさばき方や、沖ノ島などについて、いろいろ学ぶことができました。

▽杉邑 結希さん ​(福岡大2年)
小学生とのふれあいや魚さばきなど、ふだんできないことを経験できました。とても楽しい時間をありがとうございました。

▽廣瀬 蓮太さん (福岡大2年)
子どもたちと話す際は、目線を合わせることを意識しました。無邪気な小学生から元気をもらえました。


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