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JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」が10月、運行開始から丸10年を迎えました。九州の観光を引っ張る存在として成長を続け、アメリカの大手観光誌「コンデナスト・トラベラー」の「読者が選ぶ 世界の豪華列車」で3年連続の1位に。九州観光機構(福岡市)は「九州の魅力がぎっしり詰まった列車。地域を海外に売り込むうえでも、受賞はありがたい」と歓迎しています。
価格3倍でも冷めぬ人気
「(列車の価値を)決めていただくのは今日のお客さま。乗っていただき、世界一とおっしゃっていただけたらありがたい」
運行開始10年を記念し、JR博多駅で10月14日に開かれた式典。10年前のJR九州社長で、「生みの親」として登壇した唐池恒二相談役(九州観光機構会長)は“世界一”の評価に触れながら、サービスを磨き続ける姿勢をあいさつに込めました。
ななつ星は2013年10月15日にデビュー。約30億円を投じた機関車と客車7両で編成しています。22年10月の大幅リニューアルを経て、現在は10室・定員20人で運行。有田焼や大川組子といった九州の伝統工芸品を内装に用い、バーやピアノの生演奏も楽しめます。JR九州直売分の旅行代金(2人1室利用)は、現在の販売分で1人最高170万円と運行スタート時(55万円)の3倍以上です。
車両を手がけた工業デザイナーの水戸岡鋭治さんは、100本近く携わった列車の中でも、ななつ星は「別次元」と話します。「10年で車両は成人式(を迎えたようなもの)。さらにクオリティーを上げていく」と、いっそうの“成長”に期待を込めました。
フラッグ「トレイン」
九州観光機構の職員、サイモン・メットカーフさん(42)は、ななつ星の開業前後にJR九州社員として関連業務に従事し、現在は九州の魅力を海外に向けて情報発信しています。ななつ星について「常に進化、改善し、よりよいものにしているのがすばらしい。そこが、他の世界の名だたる豪華列車との違い」と指摘します。
ニュージーランド出身のサイモンさんは、2013年1月にJR九州に入社し、21年4月に機構へ出向。JR九州では、ななつ星の本部スタッフとして海外への営業や資料の英訳、クルー(乗務員)のサポートなどを担いました。10年前の運行初日、職場の仲間らと博多駅のホームに立ち、列車が見えなくなるまで見送ったことが思い出深いそうで、「日本の文化を感じた」と振り返ります。
「箸が苦手なお客さまにフォークをさりげなく用意するなどクルーの心配りは細部にわたり、海外の人に『サービスがすごい』と評価されます」。自らも、博多駅にある専用ラウンジ「金星」での応対や列車への案内などで乗客と接する機会があり、お礼の手紙が届いたり、再会を喜び合ったり、「うれしい経験」をしてきました。
各地のシェフが乗車して、ご当地の食材を調理するのも「海外ではまねできない」といいます。「ななつ星は、九州をPRするフラッグシップ的存在」と話し、「現状に満足せず、観光ルートや料理はもちろん、お客さまとの連絡方法まで細かなカイゼンを重ね、進化している。『さすが日本』だと感じます。自分もカイゼンを重ね、九州のよさをもっと海外へ発信していきたい」と先を見据えます。
チャンネル九州塾でも
九州観光機構のYouTube公式アカウント「チャンネル九州塾」でも、ななつ星に関する話題を発信しています。
唐池さんが「塾長」として観光関連情報を伝える企画「わくわく観光経済講座」では、唐池さん自らが開業に至るエピソードや思いを語る動画を公開しています。(全3話)
水戸岡さんと唐池さんの対談もあります。「デザインとまちづくり」をテーマに、鉄道デザインへの思いを二人のエピソードも交えて語ります。(全3話)
「Fukuoka Now」編集長のニック・サーズさんと、九州の魅力を発見する番組「ニックの九州旅」でも、ななつ星を取り上げています。
このほかにも、九州観光に関する話題を幅広く発信しています。今秋には、北海道観光振興機構の小金澤健司会長へのインタビューや、九州各地のクラフトビールを紹介する動画を公開しています。
【どうする北海道観光①】人気観光地になるための究極のマーケティング戦略とは?【わくわく観光経済講座】
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