町制70年・佐賀県江北町のテーマソングを作った「くるり」の岸田繁さんに聞く

企画

 今年、町制施行70周年を迎えた佐賀県江北町。西九州新幹線開業を機に、長崎線・肥前山口駅の名称も「江北駅」に。節目にあたり、町はテーマソングの制作をロックバンド「くるり」にオファーし、現地を訪れたメンバーふたりが目にした風景や人に接した体験をもとに、新曲「宝探し」が生まれました。江北町のこれからに寄り添う楽曲の作詞作曲を手がけた岸田繁さんに、作品に込めた想(おも)いを聞きました。


くるり

1996年秋、立命館大学(京都市)の音楽サークル「ロック・コミューン」にて結成。古今東西さまざまな音楽に影響を受けながら、旅を続けるロックバンド。2011年には、九州新幹線全線開通をテーマにした是枝裕和監督の映画『奇跡』の主題歌「奇跡」を制作した。

光がきれいな風景 それがうらやましい


オンラインでインタビューに答える岸田さん

――江北町の「テーマソングを作ってほしい」というオファーが届いたときのことを教えてください。

 正直、びっくりしました。江北町がどの辺りに位置しているのかも不勉強で分かってなかったので。なので、まず調べますよね。僕自身は比較的、地方自治に関心がある方なのですが、町の人々に寄り添った、その町の姿に対して自然な取り組みをされているんだなと思いました。江北町の取り組みが、何か新しい可能性を生んでいるのではないかなと、そんなイメージを抱きました。

――初めて江北町を訪れたとき、どう感じましたか。

 光がきれいだなぁと。高い建物がなく、有明海の方に向かって、「バーッ」と抜け感がある印象。僕は京都市内に住んでいるんですけど、三方が山に囲まれていて、それが日常。江北町の方々も、その「抜け感」が当たり前だとは思うんですが、それがもううらやましいなぁと思いました。ほかに食べ物も。牛肉もそうですし、あの今村のみかんジュース、すごくおいしかったです。


「宝探し」のジャケット写真(撮影:西山勲)


とびきりメロディーが親しみやすい曲

――町の風景と人の営みに触れて「宝探し」という楽曲が生まれました。

 江北町の山田恭輔町長にお会いしたときに、くるりの曲が好きだと話されていたので、普段のくるりに近いものをと考えました。

 「抜け感」と言いましたが、僕が見た風景、その色味みたいなものは意識しました。明るい感じや町の素朴な感じを、地域一帯の風景をイメージしながら。その上で、メロディーを親しみやすく、そこはすごく意識をしました。くるりの楽曲の中でもとびきりメロディーが親しみやすい曲です。

――「宝探し」という言葉の意図は。

 「宝探し」というワクワクする気持ちは、大人になると失われるもののように思い込んでいるかもしれないですけど、結局どの世代になってもずっと変わらないと思います。何が宝物なのかというのは、そこにいる人の数だけ答えがある。地域の皆さんにとって大事なものの歌がいいなと思って、「宝探し」にしました。また、僕自身が江北町を訪れた経験というのも、トレジャーハンティングのような感じがありましたので、それで「宝探し」、そんな感じです。

 あと、今の時代は、すぐに動画も見られるし、特産品もすぐに届くし、交通も便利だから日帰りもできる。地域に触れることがなくても知ったつもりになれる。その良さもあると思うんですが、やっぱり、そこに行って初めて分かることがある。今回、江北町を訪れてみて、そこに行かないと味わえない、みたいな感覚をとても強く思いました。

 江北町の方々のために書いた歌ではありますが、北海道の人にもアメリカの人にも聴いてほしいなと思う曲です。


肥前山口駅を訪れた岸田さん(江北町70周年記念動画から)

――肥前山口駅改め江北駅の自動放送メロディーとしても親しまれることに。

 本当にありがたいです。抜群に良いメロディーが書けたという実感がありましたが、駅メロディーになって再認識しました。また、鉄道趣味人としては、長年親しまれてきた駅名に名残はありますが、これからも確固たる交通の要衝として、地域を支えていってほしいなと思います。

右へ倣えじゃなく、その人を思って

――ローカルと呼ばれるような地域の未来について。

 未来のこととか、何をどうすればいいのかっていう話は僕にはできないんですけれども、山田町長の考えをお聞きしたときに、「右へ倣(なら)え」じゃなくて、その人を思って、ちゃんと町づくりされてるなという印象をすごく持ちました。僕がもし江北町の町民だったとしたら、こういうリーダーがいるというのはすごく安心、あるいはワクワクするんじゃないかなと思いました。

 ローカルというのを考えると、ローカル自体の数が増えていってるのと、それぞれのローカルがどんどんミニマムになっていく問題があると思います。「私のところはこういうやり方をして、それで成り立っています」という外への発信が、観光の意味だけじゃなく、必要なのではと思います。これからは一人ひとりがなぜここを選んでいるのかという時代。だからこそ、住んでいて安心する空気づくりに取り組んでいくべきなのだろうと思います。


江北町「みんなの公園」で、ふたりでインタビューに答えた(江北町70周年記念動画から)

江北町70周年 記念特設サイト はこちら


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