<鉄路ノート>JR唐津線 佐賀を南北1世紀

企画

住宅街と田園地帯が広がる佐賀平野を走るJR唐津線の列車

 線路を挟んで住宅街と田園地帯が広がる佐賀平野を、白と黄色の列車が走り抜けた。奥には天山(1046メートル)などの山々がそびえる。

 佐賀県のJR唐津線は、久保田駅(佐賀市)と西唐津駅(唐津市)間の42.5キロを結ぶ。久保田駅から長崎線に乗り入れている。


松浦川に沿って走るJR唐津線の列車


 始まりは民営の「唐津興業鉄道」。一帯で採掘される石炭を唐津港に輸送するために整備され、「九州鉄道」となった後の1903年に全線が開通した。レンガ造りのトンネルや、明治後期頃に建てられた駅舎が今も残る。県内の2大都市をつなぐ地域住民の足として長く愛され続けている。



(写真:板山康成、久保敏郎、木佐貫冬星)

<読売新聞 西部夕刊 2021.12.10~12.27 掲載>

駅舎に響く交流の音色

 駅の待合室にピアノの音色が響く。明治後期頃の建築とされ、国の登録有形文化財であるJR唐津線・小城駅(佐賀県小城市)の駅舎では日々、地域住民や通学の生徒らが 鍵盤(けんばん)をたたく姿が見られる。


JR小城駅の待合室にやさしい音色を届けるピアノ

 駅舎にピアノが登場したのは2018年。「オランダのように音楽が身近な存在になれば」と、オランダとの文化交流を進める佐賀県が設置した。


明治後期頃の建築とされる小城駅


 登下校時にピアノを弾くことがある高校2年生の女子は「音色に人が集まってきて、楽しくなります」と笑顔を見せた。

 ピアノを利用できるのは午前9時~午後7時。当面、新型コロナウイルス対策で小城市の市民に限定している。



走るイルミネーション

 赤や青、緑色で彩られた車内は、一足早くクリスマスムードに包まれた。JR唐津線で12月19日、「イルミネーション列車」が運行され、家族連れらが楽しんだ。


クリスマスムードに包まれた「イルミネーション列車」

 多くの沿線住民に利用してもらおうと、JR九州と佐賀県が毎年この時期に企画している。通常の2両編成の列車に、約7500個のLED電球のほかクリスマスリースなどを飾り付けた1両を増結。西唐津―佐賀駅間と多久―佐賀駅間を各1往復した。



 車内では、サンタクロースに 扮(ふん)した同社社員が、子どもたちにメモ帳などのクリスマスプレゼントを配った。家族4人で乗車した同県小城市の会社員男性(40)は「子どもも喜んでいます」と笑顔を見せた。


advertisement

村田英雄 たたえる碑


村田英雄さんの業績をたたえる記念碑

 「王将」などのヒット曲で知られる歌手・村田英雄さん(1929~2002年)の業績をたたえる記念碑が、JR相知(おうち)駅(佐賀県唐津市相知町)そばにある。碑の近くを唐津線の黄色い列車が走り抜けた。


レコードに見立てた碑には「無法松の一生」の文字が彫られている


 村田さんは福岡県で生まれ、幼少期を相知町(現・唐津市)で過ごした。記念碑は地域の有志らの手で2016年に設置された。「旅立ちの里」と書かれた石碑の周りに、「無法松の一生」などヒット曲のレコードに見立てた碑が並んでいる。設立の中心となった 都市(といち)右太雄(うたお)さん(72)は、「駅を利用する若い人たちにも村田さんの功績を知ってもらいたい」と話す。



SL支えた八角の塔

 かつて炭鉱で栄えた佐賀県唐津市 厳木(きゅうらぎ)町にあるJR唐津線・厳木駅で、レンガ造りの給水塔が夜、ライトアップされている。


ライトアップされた厳木駅の給水塔

 給水塔は1926年(大正15年)に建てられ、蒸気機関車(SL)に長く水を供給してきた。唐津線からSLが姿を消し、73年から使用されていないが、今も、八角形に積み上げられたレンガ造りの土台の上に鉄製タンクが載っている。


日中も存在感のある給水塔

 ライトアップを企画したのは、まちづくり団体「きゅうらぎデザイン」(竹花奈美子代表)。日没から終電の通過まで点灯している。4月上旬まで続ける予定だ。



※ 年齢・肩書などは当時

動画(読売新聞オンライン)はこちらから

<鉄路ノート>に掲載された写真の購入や二次使用については、読売新聞西部本社 企画共創部へ電話(092-715-4354)、メールでお問い合わせください。


advertisement

この記事をシェアする