長浜ににぎわい再び!復活した屋台街で店主さんに話を聞いた

企画

長浜屋台街を取材する学生記者の(右から)梅本さんと川口さん

 読売新聞西部本社は、若者が記者となって書いた記事を「福岡ふかぼりメディア ささっとー」に掲載する「学生記者プロジェクト」を始めました。今回は、三好不動産(福岡市)の協力で、同社が運営する学生ボランティア支援団体「一般社団法人アースプロジェクト福岡」に参加している大学生らから希望者を募り、記者体験をサポート。第1弾は、女子学生2人が福岡市中央区の「長浜屋台街」を取材しました。


川口さん(左)と梅本さん


学生記者紹介

川口陽笑(かわぐち・ひなた)記者
 食べることが好きな福岡女子大学3年生。特にホルモンが好物。趣味は県外旅行ですが、屋台のような未知の世界があると知り、福岡散策にはまりそうです。
梅本夢菜(うめもと・ゆな)記者
 野菜と卵料理が大好きな大学4年生です。山口県出身で、福岡市民歴は3年半。今回初めて屋台を体験しました。


<アースプロジェクト福岡>
 三好不動産が、若者のボランティア活動を支援しようと2016年11月に設立。大学生や専門学校生、高校生ら約1400人が登録している。SDGsの実践を目指し、海岸の清掃や、災害被災地での支援活動、子ども食堂の手伝いなどに取り組んでいる。

初めての屋台へGO!!


にぎわいを取り戻しつつある長浜屋台街


 私たち学生記者は8月23日、福岡市中央区の「長浜屋台街」を取材しました。近年、店主の高齢化などで屋台が減り、一時期は1軒のみになったそうですが、今年6月から7月にかけて7軒が新規出店しました。2人とも屋台は初めて。にぎわいを取り戻しつつある長浜屋台街を訪ねました。(川口陽笑、梅本夢菜)


長浜屋台とは

ありそうでなかった食材

 福岡市地下鉄の赤坂駅に近い読売新聞西部本社から徒歩約5分。蒸し暑い中、道路沿いで数軒の屋台が開店準備をしていました。

 まず訪ねたのは、福岡の名物である明太子料理をテーマにした屋台です。店主の米満達治さん(28)は、「屋台ではありそうでなかった食材」として、明太子に着目したそうです。「明太中毒」というかなりインパクトのある店名については、「長浜に来た方々にすぐに覚えてもらえるように」と思いついたといいます。


笑顔が素敵な「明太中毒」の米満さん(左)ら


 大学生の頃、高校の先輩が福岡市・中洲で営む屋台でアルバイトを始めたのがきっかけで、「自分でもやってみよう」と市の公募に応じ、枠のあった長浜に出店しました。「天神や博多よりも人の流れが緩やかなので、一つの店でゆっくり過ごせるところが長浜屋台の魅力」と語ります。


熱々の「明太とろろ鍋」


 名物は「明太とろろ鍋」(1200円)。明太子が溶け込んだまろやかな味わいのスープと白菜などの野菜の組み合わせが絶品です。「明太豚バラレタス巻き」(850円)は、レタスと明太子がぎゅうぎゅうに豚バラ肉に巻かれていて、食べ応えがありました。こしょうの加減も、炭火焼きの香りも最高です。「焼き茄子明太」(800円)は、とろける食感のナスと明太子が絶妙でした。


レタスがたっぷり詰まったボリュームたっぷりの「明太豚バラレタス巻き」


 インスタ映えする料理ばかりで、学生記者は食べながらついつい写真を撮りすぎてしまいました。


かつお節がたっぷりかかった、トロトロの「焼き茄子明太」


「プレイボール」で乾杯!


 次に話を聞いた「長浜市民球場」は、名前の通り野球をモチーフにした屋台です。店主の松清貴広さん(45)が生まれ育ったのは大阪。阪神タイガースのファンが多い土地柄ですが、子どもの頃からダイエーホークス(現ソフトバンクホークス)が大好きで、福岡に家族で観戦に訪れていたそうです。試合帰りによく立ち寄っていた長浜屋台にも愛着を感じていたことから、「長浜を元気にしたい」と公募に応じ、それまで住んでいた東京から移住してきました。


「長浜市民球場」店主の松清さんとポップでかわいいのれん


 松清さんは「ドームが近くて野球ファンがたくさん来てくれる。お客さんには、屋台を通じて福岡を好きになってほしい」と熱い思いを語ってくれました。


 「球場」という名前の通り、乾杯は「プレイボール」、会計は「ゲームセット」と言うことになっていて、一体感があります。


バックのメニュー表も野球仕様でテンションが上がります


 メニューも徹底して野球に絡めています。主なメニューは「スタメン」として日によって変わりますが、この日のおすすめは3番ライトの「豚肉とピーマンのフルカウント炒め」(650円)。緑、黄、赤の彩りがきれいで、それぞれスリーボール、ツーストライク、ツーアウトを表しているそうです。


見た目がカラフルな「豚肉とピーマンのフルカウント炒め」


 ほかにも、5番サードの「せせり」(650円)や、新人(新メニュー)の「ホルモンのみそ炒め」など、魅力的なラインナップでした。ほかのお客さんとの会話も楽しみながら、おいしくいただきました。


ミートボール 何個ゲット?


「長浜のひろし」をアピールする井上さん


 井上宏志さん(38)が経営する「長浜のひろし」は、野菜巻きがメインの屋台です。


 キュウリを1本丸ごと豚肉で巻いた「シェアまき」(600円)や、エノキをベーコンで巻いた「えのきまき」(300円)など、野菜やキノコをふんだんに使ったメニューがそろっています。


自らはさみで切り分けられる「シェアまき」


 料理は独学で、野菜を片っ端から巻いてみたそうです。人気ユーチューバーの料理研究家リュウジさんのレシピなども参考に、メニューを考案。ヘルシーで食べやすいため、女性同士やカップルでの来店も多いそうです。


シンプルでおしゃれなのれん


 井上さんは以前、関東に本社のある食品会社に勤めるサラリーマンでした。転勤で福岡に引っ越してきて、天神の屋台の常連になったのがきっかけで、「自分でもやってみたい」と出店を希望しました。


 勤めていた食品会社の商品を使った「CRミートボール」(380円)もおすすめだそうです。いくつ食べられるかは運任せ。パチンコのような木の箱が用意されていて、ルーレットのように玉を転がし、1~10のどこに入るかでミートボールの個数が決まります。


いくつ食べられる? 遊び心も満載


 学生記者は8個を当てましたが、特別に10個盛った皿をいただきました。このような心遣いも人気の秘訣かもしれません。


まちの魅力と元気を発信

 三つの屋台に行ってみて、共通していると思ったことは、何といっても店員さんとお客さんとの距離が近いことです。お客さん同士で仲良くなることもあるようで、アットホームな雰囲気を感じました。地元の人たちと観光客の交流の場にもなっているようです。


開店準備が進む長浜屋台街


 屋台の店主同士の交流もあり、悪天候で屋台が出せない時には、集まって語り合うこともあるそうです。


 また、お客さんへの気遣いも感じました。食中毒対策として、食材を入れるクーラーボックスやテーブルを拭く除菌シートなどを準備していて、扇風機を設置するなど熱中症対策もとられていました。


笑顔で質問に答えてくれた


 学生記者たちは、忙しい開店準備の時間帯に訪ねたのですが、店主の方々は笑顔で質問に答えてくれました。福岡のまちや長浜屋台の魅力を伝えようとしている姿も印象に残りました。福岡の食材を使い、彩りにも気を配った「映えるメニュー」の多さにも引きつけられました。


 人と人との交流が少なくなったと言われる現代において、昔ながらの風情を残しながらも流行を取り入れ、交流や観光の拠点となっている屋台。通いたいという常連さんの気持ちがよくわかりました。ぜひ皆さん、行ってみてはいかがでしょうか。

※各店のメニュー、価格はいずれも取材時点のものです

取材後記


川口陽笑記者

 屋台で働く方々やお客さんの笑顔につられ、終始楽しく取材できました。屋台の大きな魅力の一つは「距離の近さ」だと思います。一度入ってしまえば女性や若者、一人客、お酒の飲めない人でもすぐになじみ、楽しい時間を過ごせます。私も近いうちに、複数で、または一人でも来店しようと思いました。


梅本夢菜記者

 初めて本格的な取材をしましたが、非常に緊張しました。もともと人のお話を聞くことは好きなのですが、取材のために質問をしたり記事にまとめたりするのは難しかったです。ご協力していただいた方々のおかげで、良い体験ができました。


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