4年ぶりに開催!田川市に初夏を告げる「川渡り神幸祭」

企画

祭りの見所、山笠が一列に並ぶ競演会

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  • 470年つないできた思い
  • 獅子が舞い、神輿が動く
  • 幟山笠が駆け、彦山川へ

 福岡県田川市の初夏の風物詩「川渡り神幸祭」が5月20、21日に行われました。お旅所へ向かう豪華な神輿(みこし)を先頭に、色とりどりに飾り付けた幟(のぼり)山笠が彦山川を渡る勇壮な神事。コロナ禍による中止を経て4年ぶりに開催された祭りは、2日間で25万人以上の人出でにぎわい、まちは熱気に包まれました。

470年つないできた思い

 川渡り神幸祭は、約470年前から同市の風治(ふうじ)八幡宮に伝わり、起源は永禄年間(1558~70年)にさかのぼります。当時流行していた疫病の終息を祈願した氏子らが、そのお礼として山笠を建立したことが祭りの始まりとされています。


西日本最大級といわれる風治八幡宮の神輿


 福岡県指定無形民俗文化財の第1号で、県内の五大祭りの一つに数えられます。祭りで登場する神輿は西日本最大級といわれ、60人以上の男たちで担ぎます。


 無病息災を願って始まった風治八幡宮の川渡り神幸祭――。コロナ禍を経てようやく開催がかない、祭りに対する人々の思いは昔も今も変わりありません。


「大勢の人が祭りを心待ちにしていた」と語る宇都宮宮司


 宇都宮誠宮司は「祭りをしたいという気持ちをみんなが我慢して耐え、やっとできるようになりました。みんながうれしそうな顔をしていて、感動的で感無量です」としみじみ語りました。


お旅所を目指して風治八幡宮の階段を下る神輿


 祭りの初日は、神輿がお旅所に向かう「お下り」です。八幡宮を出発した2基の神輿と11台の幟山笠が水しぶきを上げながら彦山川を渡ります。神輿はお旅所で一泊し、翌日の「お上り」で対岸の八幡宮に戻ります。


獅子が舞い、神輿が動く

 風治八幡宮の例大祭が始まる20日正午すぎ、参道の階段を下った市道に11台の山笠が集まってきました。


風治八幡宮のそばに山笠が集まり始める

 山笠は、高さ最大約13メートル、重さ2~3トン。法被姿の男たちが幟や、稲穂をかたどった「バレン」と呼ばれる5色の飾りを立てていきます。五穀豊穣(ほうじょう)などの意味が込められたバレンの長さは約5メートル。祭りのあとは“御利益”があるとして家庭の玄関などに飾るといいます。


山笠の屋根に幟やバレンを立てていく

 今年の「一番山笠」として、先頭を切って川に入るのは下伊田区。区長の松本吉隆さんは「再開のうれしさと安堵(あんど)で胸がいっぱいです。やっぱり祭りはいい。まちが元気になっていくようです」と笑顔で山笠を見上げました。


「祭りあっての田川」と話す松本さん


 「獅子が舞わねば神輿が動かぬ」。祭りではそう言い伝えられています。祝詞の奏上などが行われたあと、本殿の前で獅子の舞が奉納されました。


獅子舞を見ようと境内には多くの人が集まった

 獅子舞も祭りとともに受け継がれてきた伝統で、神幸祭に欠かせない存在です。太鼓や笛の音に合わせて躍動する2頭の獅子が舞い終えると、男たちが声を合わせて巨大な神輿を担ぎ上げます。


迫力のある獅子の舞い

 4年ぶりのお旅所へ――。八幡宮の階段を下りた神輿は山笠と合流し、田川伊田駅前などを巡行して彦山川へと進んでいきます。

幟山笠が駆け、彦山川へ


「がぶり」を披露する山笠

 渡る川幅は40メートルほど。獅子が舞って安全を祈願すると、神輿と山笠が次々と川に入っていきます。鉦(かね)や太鼓の音が響く中、男たちが山笠を上下に揺さぶる「がぶり」を披露すると、水しぶきが上がってバレンが激しく揺れました。河川敷を埋める見物人から大歓声が上がり、祭りの盛り上がりは最高潮に達します。

 山笠が川の中で横一線に並ぶ「競演会」も見どころの一つ。華やかさを競って、よその山笠には負けられないという男たちのプライドがぶつかり合い、水しぶきが一段と高く上がります。


 神輿と山笠がお旅所に着く頃には、日が傾いていました。周囲には露店が連なり、焼きトウモロコシやイカ焼きを食べたり、金魚すくいに挑戦したりするカップルや家族連れの笑顔が電灯の明かりに照らされていました。


たくさんの露店も並び、大勢の人でにぎわった


 「地元に根付いたこの祭りを子どもたちに見せることができました。伝統を絶やすことなく、次の世代につなげていってほしいです」と、下伊田区の山笠総指揮者で川渡り青年友志会長の渡邉丈敬さん。疲れ切った表情の中に、達成感がうかがえました。


彦山川で山笠の指揮をとる渡邉さん


 日が暮れると、お旅所に鎮座する神輿と広場に並ぶ山笠はライトアップで照らし出されました。記念写真を撮る見物人らに囲まれ、人々の健康や地域の平穏を願いながら、彦山川の流れを静かに見守っているかのようでした。


ライトアップされた山笠


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