【大分】四方良し!ジビエの廃棄部位をペットフードに
若者の起業など様々な活動を支援、表彰する「MIRAI CREATOR’Z 2026」(一般社団法人日本若者キャリア支援協会主催)の最高位の10人に、大分県中津市耶馬渓町でジビエ事業を行う江渕麗葉(うるは)さん(22)が1500人の中から選ばれた。自ら鹿やイノシシを狩猟、加工しており、「ジビエを中津の名物にして、ふる里の活性化に役立てたい」と話す。(大石健一)
未来をつくる若者TOP10に
中津市の江渕麗葉さん
「筋とか骨とかの体の構造を把握し、力を入れないで切るのがコツなんです」
10月上旬、同市耶馬渓町の山あいの作業場で、江渕さんは包丁を手に、地元の猟師が持ち込んだ鹿を手際よく20分ほどで解体していった。
作業場には食品の乾燥機、冷凍庫、食品を真空にして保存する機械を備え、ジビエを犬や猫、爬虫(はちゅう)類向けのペットフードに加工して出荷している。「食いつき方が違う」と、気に入ってくれる飼い主が多いといい、「必要としてくれる人がいるのがうれしい」と手応えを語る。
生まれも育ちも耶馬渓町。農業をしながら猟もしていた祖父・稔さん(74)が鹿や鶏を解体する姿を日常的に見て、「おじいちゃん、かっこいいな」と思いながら育った。
大分市の高校を経て神戸市の大学へ進学したが、米や野菜を含めすべての食材をスーパーなどで買う都会の生活に違和感を覚えた。エスカレーターで上り下りする人の波を見て、「もし災害などで食品が買えなくなった時、これだけの人の食はどうなるのか」と思いを巡らせたという。
「隠れたフードロス」を知る
入学から数か月で大学を休学して帰郷し、宇佐市で食肉処理のバイトに従事した。鹿を解体する工程で、3分の2の部位は使われずに捨てられ、不要部分の処理にも費用がかかることを知り、加工段階で「隠れたフードロスがある」と感じた。捨てられる背骨や首の骨、内臓の一部などを加工してペット用のジャーキーとしてインターネットで販売を始めた。
狩猟免許も取って地元の猟友会に入り、25年は鹿を中心に、わな猟で自分でも116頭を捕獲。25年1月に個人事業主として「耶馬渓ジビエ麗鹿(れいか)」を設立した。注文は北海道から沖縄まで全国から舞い込む。「ペットの餌は種類が多い分、品質にこだわる人も多く、東京から製造過程を見に来る人もいる」と話す。
「巡るいのち、つなぐ恵み」
今回の審査では、「巡るいのち、つなぐ恵み。四方良しの食品廃棄削減事業」をテーマとして受賞した。「四方良し」は、食肉の処理場、消費者、麗鹿、自然環境の4者にメリットがあることを表しているという。
9月には中津市の奥塚正典市長に受賞を報告。市長は「若い女性が自ら起業して、全国で高い評価を受けたのはすばらしい。地元で活躍してくれることは、他の人にもいい刺激になる」とたたえ、江渕さんは「ただただ、びっくり。フードロス削減に、もっと理解が広がればうれしい」と話した。
「『耶馬渓ジビエ』をもっとPRしたい」と、11月には地元の秋祭りの実行委員会の協力を得て、初の「ジビエフェス」を開く予定だ。「ジビエはフレンチレストランなどでも需要があり、今後も展開していきたい」と意気込みを語った。




