【大分】青春の味「サンチー」が全国へ! 高校購買が原点
「サンチー」の名で大分市内の高校生を中心に親しまれてきた「三角チーズパン」が、全国に進出している。元々、「青春の味」と呼ぶ人がいるほど根強いファンがいるほか、県外百貨店でのイベントなどに出店すると売り切れが続出。新型コロナウイルス禍を契機に新たな販路を開拓し、県内でもさらなる定着を狙っている。
メロンパンのような甘みと塩加減
8月上旬、同市迫のつるさき食品の工場内には、約1400枚の食パンが入ったケースが積まれていた。従業員が1枚1枚にチーズクリームを塗り、斜めに食パンを切るとその日の仕込みは完了。翌日、「企業秘密」という特殊な生地でコーティングしてオーブンで焼き上げると、サンチーの完成だ。
メロンパンのような甘みと、チーズのほどよい塩加減がやみつきになるのが「三角チーズパン」。1987年の誕生以来、市東部の高校の購買を中心に販売されてきた。
つるさき食品は小中学校の給食用のパンを製造しており、75年から高校の購買で販売するパンも手がけ始めた。20種類ほどのパンが並ぶなか、ひときわ人気を集めるようになったのが、サンチーだった。休み時間になると生徒たちが詰めかけ、50個が10分で完売する日もあった。
催しで人気
2018年からは全国展開に乗り出した。経営戦略や働き方改革から、それまで行っていた弁当事業をやめ、事業をパン製造に集中したためだ。足立洋三社長は「給食事業で培った大量生産技術と、サンチーが会社の強み。それらを生かすには、販路を全国に広げるのが一番だと考えた」と振り返る。
最初の出店は、同年の東京駅での「ご当地パン」の販売イベントだった。全国の有名パンが集まる中、用意した100個は完売。客の多くは大分市内の高校の卒業生で、口々に「なつかしい」と話していたという。「卒業生は全国にいるし、東京の人にも受け入れられた」と手応えを感じた。
その後、有名百貨店のバイヤーの目に留まり、首都圏や関西の百貨店のイベントの常連になった。バイヤーとの仲介をする県物産協会の担当者は「味だけでなく、『購買パンから始まった』というストーリー性や昔ながらの見た目が評価されている。評判が評判を呼び、問い合わせも多い」と語る。
コロナ越え展開目指す
しかし、コロナ禍で状況は一変。販売イベントがすべて中止となり、高校内での購買もできなくなった。売り上げが大きく落ち込む中、活路を見いだしたのは、地元スーパーへの販路開拓だった。
元々、テレビでの紹介や、卒業生たちの口コミのおかげで、サンチーの評判は県内に広がっていた。スーパーもすぐに反応し、大分市内10店で定期的に販売することになった。また、佐伯市や宇佐市、福岡市などのスーパーでも不定期で販売し、連日完売しているという。足立社長は「会社としても自信になり、積極的にチャレンジする勇気がもらえた」という。
今春からはイベントも通常通りに再開され、足踏みしていた全国展開に希望が見え始めた。パンの輸送条件が整う秋以降、本格的に出店を再開させるつもりという。
また、現在はサンチーの冷凍化も計画している。食品ロスを減らすことで、安定的な製造と供給が可能になる。
足立社長は「購買パンから始まったサンチーが多くの人に愛されるようになり、うれしい。これからも地元に根ざしながら、大分のパンとして全国の人に届けていきたい」と話している。
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サンチーは原料価格高騰などを理由に9月1日から値上げされる。県内の価格は1個180円(税込み)から230円(同)となる。
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