【宮崎】好みの焼酎を見つけて!県がマップで「見える化」

 焼酎の産地として名高い宮崎県が、県内でつくられる芋焼酎74銘柄の香りや味を「見える化」した。「芳醇(ほうじゅん)」「すっきり」など四つの特徴に基づき、銘柄ごとに分布を示して一覧にしたもので、全国初の試みという。若者の「焼酎離れ」も進む中、楽しみながら飲み比べてもらうことで、ファンの裾野を広げていきたい考えだ。

評価は科学的に


 宮崎市の繁華街「ニシタチ」にある「焼酎Barろ過」で12月4日、若者たちが「宮崎本格焼酎味わいマップ」を眺めて焼酎を味わっていた。友人と訪れた京都市の大学院生(31)は「『あれも試したい』『これもおいしそう』となるので、楽しく飲める」と声を弾ませた。従業員も「マップのおかげで焼酎の特徴を伝えやすくなった」と喜ぶ。


味わいマップを手に焼酎を楽しむ人たち(12月4日、宮崎市の焼酎Barろ過で)

 県がつくったマップには、取り組みに賛同した県内27蔵元自慢の逸品が掲載されている。バナナやバラのような香りを生む成分の含有量を数値化するなど、味や香りに影響する21の成分を県食品開発センターが分析。さらに、県酒造組合による鑑評会で審査員が評価した「きき酒」の結果も踏まえ、味の特徴を分類した。

 バランスがよいことを示す「和」を中心に置いた上で、発酵由来成分による甘い香りや深みを感じやすい「芳醇」、原料のサツマイモ由来のかんきつ系の香りが特徴の「華やか」、なめらかでキレのよい「すっきり」が囲むように配置され、各銘柄の位置によって味わいが一目でわかるように工夫されている。

英語版作成も

 ふるさと納税の返礼品としても人気の「黒霧島」(都城市の霧島酒造)は「芳醇」の傾向が強め。麦焼酎「百年の孤独」で知られる黒木本店(高鍋町)の「㐂六」は「華やか」、京屋酒造(日南市)の「甕雫」は「すっきり」に近い場所にある。「和」の代表格は宮田本店(日南市)の「日南娘かめ仕込み」などだ。


マップの一部。「黒霧島」は「芳醇」の傾向が強め、などが表現されている

 マップは県の「宮崎本格焼酎応援サイト だれやみ」で見られるほか、焼酎を扱う飲食店などにもある。企画した県国際・経済交流課は「これまでは感覚的なものに頼ってきたが、科学的に分析し、客観的なデータに基づいて味を紹介できるようになった」とし、「焼酎になじみの薄い若い世代にも説得力を持って伝えることができ、海外市場の開拓にもつなげられる」としている。

 県は訪日客向けに英語版の作成も進めており、県食品開発センターの山本英樹特別研究員は「マップを見ると、宮崎の芋焼酎はバラエティー豊かだと再発見できる」とした上で、「人によって感じ方に差はあるが、それも含めて焼酎談議に花を咲かせてほしい。これまでなじみのなかった人にもお気に入りの一本を見つけるきっかけにしてほしい」とPRしている。

焼酎の出荷は減少傾向

国内、10年で2割減

 伝統的な蒸留方法を用い、原料の風味を生かす製法が特徴の「本格焼酎」。2022酒造年度(2022年7月~23年6月)に宮崎県で出荷されたのは約11万キロ・リットルで、9年連続で日本一だ。中でも芋焼酎は9割近い約9万3900キロ・リットルを占める。ただ、コロナ禍に伴う宴会の減少などもあり、国内の出荷量はこの10年で約2割減少。市場は縮小傾向にあるという。

 芋焼酎の原料となるサツマイモの伝染病で、芋が腐る「サツマイモ基腐(もとぐされ)病」の影響も出ている。18年度に宮崎、鹿児島両県などで確認され、その後も発生が続いている。焼酎大手の霧島酒造は、サツマイモ不足を受けて主力の「黒霧島」や「白霧島」の一部が販売休止に追い込まれている。

 宮崎県酒造組合の会長で、京屋酒造の渡辺真一郎社長は「コロナ禍で飲酒の機会が減った影響は今も続いている」と明かし、「マップを通じて焼酎に興味を持つ人を増やし、県産焼酎のブランド力向上につなげたい」と期待を寄せる。


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