【鹿児島】みんなを笑顔に!中学生アーティストが活躍中
鹿児島市名山町の中学1年生、西村太郎さん(12)が、ユニークな絵画の創作活動を続けている。公募展でも独特な世界観が評価され、全国から寄せられた数々のアーティストの作品を抑えて入賞するほどの腕前だ。6月には屋久島に引っ越して新たな生活をスタートさせる。「世界一の画家になって、みんなを爆笑させたい」と夢を膨らませる。
最年少で全国優秀賞
昭和初期のレトロな雰囲気を残す鹿児島市の名山堀エリアの一角で、西村さんの「ちんちんまんだら展」と題した個展が5月上旬まで開かれた。ひときわ目をひいていたのは、36枚の墨絵を組み合わせた縦180センチ、横170センチの巨大な曼荼羅(まんだら)だ。
1枚1枚に動物や宇宙人などを題材にしたキャラクターを墨で1体ずつ描いた力作で、2024年、福岡県田川市美術館主催の全国公募展「タガワアートビエンナーレ『英展』」で、最年少で優秀賞に輝いた。
熊本県人吉市から個展に訪れた高校3年の生徒(17)は「こんなに自由でいいんだと気付かされた。作品一つ一つから素直さが伝わり、見ていて元気をもらえた」と話した。
観覧客の上々の反応に西村さんは「みんなが僕の作品を見ると、驚いたり、楽しんだりしてくれる。その反応を見るのがうれしい」と屈託ない笑顔を見せる。
不登校で感じた孤独
初めて作品を世に出したのは小学2年生の頃だ。自営業の母・亜希子さん(51)の知人と名山町で二人展を開催して以降、地元で個展を開いてきた。
一方、アレルギー体質で、柔軟剤などの化学物質による体調不良が続き、小学5年の3学期から不登校になった。修学旅行の写真に自身が写らないなど孤独を感じることが多くなった。
そんな中で「ちんちんまんだら」は完成した。孤独を紛らわすように一緒にサッカーをしてくれる架空の友達や、思うように描けずにイライラしながら描いたキャラクターなど、その時々の感情を表現した墨絵を約1か月かけて数百枚描いた。
感情を素直に表現
出来栄えのいい36枚を厳選して24年の英展に応募すると、審査委員からは「描きたい気持ちが正直に出ている」と高く評価された。
画風が下品だと批判されて傷つくこともある。西村さんは「納得する意見があれば、受け入れて次の作品に生かしていく。でも、楽しみにしてくれている人もたくさんいる」と前を向く。
5月末には生まれ育った名山町を離れ、自然豊かな屋久島に引っ越す予定だ。体調をみながら島の中学へ通い、友達とサッカーをしたり、川でわなをしかけて魚を捕ったりすることを楽しみにしているという。
「今まで作ったことのない巨大な一つの作品を作りたい。いずれは島で個展を開きたい」。人を楽しませる作品を生み出すため、挑戦を続ける。