【宮崎】「ぼけない君」発売20年 美郷町生まれのゲーム

 宮崎県美郷町で生まれた隠れたヒット商品「ぼけない君」が発売から20年を迎えた。地元産木材の手触りが心地よいボードゲームは、これまでに3万個超を販売。盤上の36個のビー玉を操るもので、その名の通り脳の活性化にピッタリだ。2023年は地元で初めて大会が開かれた。


工房では和気あいあいとした雰囲気で製作が行われる(美郷町で)

 「ぼけない君」は基本的に一人でプレーする。28センチ四方の盤に穴が縦横に並び、中心の一つを除く36個の穴にビー玉を置いてゲームを開始。好きなビー玉を手にとり、隣のビー玉を一つだけ飛び越すように動かすと、飛び越されたビー玉を外に出せる。それを繰り返して最後に盤上のビー玉を1個まで減らせたらゲームクリアとなる。2個以上残った状態でいずれのビー玉も動かせなくなったらゲームは途中で終了する。欧州で伝わる遊び「ペグソリティア(ソリテール)」とほぼ同じだ。


「ぼけない君」の遊び方の例

 ビー玉を「斜めに動かす」ことと「二つ以上飛び越す」ことはNG。単純なゲームだが、実は手ごわい。漫然とプレーするとビー玉を2個、3個と残して手詰まりになってしまう。先々を見越して動かすのがコツで、その難しさは将棋にも通じる。

 製造するのは美郷町の北郷女性林研グループ。町産木材の生かし方を考えようと、元小学校長の前田克行さんを講師に招き、木工品作りを始めたのをきっかけに、2004年に製品化した。

 約10人のメンバーはシイタケ栽培や林業などの傍ら、製作にいそしむ。杉の端材に機械で穴を開け、枠を貼り付ける。縁を切り落とし、サンダーで磨いて、仕上げにニスを塗る。盤を完成させるのにたっぷり3日をかける。

 色鮮やかなビー玉は隣の門川町にある松野工業門川工場から取り寄せる。当初は別の品を使っていたが、「ビー玉も『宮崎のもの』にしよう」と調達を決めた。表面には輝きを増す加工が施され、プレーせずに盤に並べるだけでも楽しい。


色鮮やかなビー玉を並べて遊ぶ「ぼけない君」。中央の水色のビー玉を一つ外して遊ぶのが基本だ

 1年に出荷するのは500個ほど。だが、キャッチーな商品名もあり、ゆっくりと知名度を高めた。17年から町のふるさと納税の返礼品に選ばれ、約200個を発送した。

 グループ会長の小田ちはるさん(57)は「頭を使い、手も動かして、高齢者の機能回復や認知症予防につながる」とアピールする。町の担当者も「工芸品の中で看板商品の一つ。町のPRにも役立っている」と話す。

 「ぼけない君」で町を盛り上げようと、2023年3月、住民の主催で初めての大会を開催。12月にも開いて町内外から計約50人が参加した。

 工房代表の中村勝子さん(62)は「作り手の後継者を増やしながら海外にも売り出したい」と話している。「ぼけない君」は税込み3850円。問い合わせは中村さん(080ー5216ー5288)へ。


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