【佐賀】本と出会えるカフェ「サランバン」が多久に誕生

 店主と会話しながらお気に入りの本を探せるカフェが1月、佐賀県多久市北多久町にオープンした。かつて炭鉱の町として栄えた商店街の空き店舗を、県や市の補助金を活用し、DIY(日曜大工)で改装した。店主の西村ゆかりさん(46)は「地元の人たちが集まって本に触れ、語らえる場所にしたい」と話している。

おすすめの一冊を紹介

 「この本は短編小説が詰まってます」「おいしいカレーが登場するSFです」

 1月11日午前、本屋兼カフェの「サランバン」で、西村さんが200冊ほどある本の中から、来店者におすすめの一冊を紹介した。コーヒーを飲みながら、読書談議にも花が咲いた。


来店客におすすめの本を紹介する西村さん(右)

 西村さんによると、10年ほど前に大型書店が撤退してから、市内には棚から本を選んで購入できる本屋がなくなってしまったという。来店した市立図書館の辻成美館長(50)は「本をおすすめしてもらえる場所が増え、ここで人生を変えるような一冊が見つかるかもしれない」と期待を込める。

 西村さんは同市出身で、幼い頃から読書好き。現在も年間100冊ほど読破しており、「いつか本屋を開くことが夢だった」。市役所や病院、学校が近く、通勤通学で使われる道路沿いの商店街「中多久マーケット」の一角に目をつけ、2年前に出店を決意した。

 中多久マーケットは、炭鉱で栄えた頃からある商店街だが、約50年前に鉱山が閉山してから徐々にシャッターが閉まる店が増えていた。「地元が活性化する場所にもしたい」との思いで、県立産業技術学院で事務として働く傍ら準備を進めた。

普段読書をしない人も

 借りたのは、肉屋として使われていた店舗。天井や外壁などの基礎工事こそ業者に依頼したが、同僚や家族に手伝ってもらいながら本棚やカウンターを手作りしたり、壁を塗ったりして、2024年秋頃、改装を終えた。


店内の本棚には様々な分野の本が並ぶ

 店名は韓国語で「主人がもてなす部屋」を表すといい、本の販売に加え、コーヒーやビールなどの飲み物を提供する。司書の資格を持っており、小学校の図書館などで勤務した経験もあることから、店内には文芸本のほか、絵本や詩、短歌など幅広い分野で、「普段読書をしていない人でも読みやすい本を並べた」と話す。

 現在は、西村さんが選んだ本が並んでいるが、「本の厚さや重さを感じながら選んでもらい、お客さんと語らいながら、本棚をどんどん変化させていきたい」と先を見据えていた。

 午前11時~午後9時。土日のみの営業。問い合わせはメールへ。


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