針を落とす手間、温かみのある音 レコードに触れるカフェが人気

テーブルに置かれたレコードプレーヤーで好きな曲を楽しむ来店者たち

 福岡市内に5月に開店した、自席でアナログレコードを聴けるユニークなカフェが、若者の人気を集めている。平日でも入店待ちになる日がしばしばある。好きな曲を存分に聴ける没入感に加え、レコードをかける作業や温かみを感じる音が目新しく映っているようだ。

福岡市・大名
LUCY'S RECORD CAFE

 「LUCY'S RECORD CAFE(ルーシーズ・レコード・カフェ)」は、福岡市中央区大名の飲食店やアパレルショップが並ぶ場所にある。約110平方メートルの店内に入ると、壁の棚にずらりと並んだレコードに圧倒される。約2300枚あり、洋楽、昭和歌謡からJポップ、Kポップ、アニメ主題歌までバラエティーに富んでいる。

 カウンターとソファ付きの計26ある各テーブルにはレコードプレーヤーが置かれている。客は利用料と飲み物や軽食代を支払った後、棚から好きな一枚を選び、自席で聴く。

 オーナーの信佐拓万(のぶさたくま)さん(37)によると、同様のスタイルの店は「東京と大阪に数店舗ある程度」という。5月15日のオープンから来店客は途切れず、多い日は70~80人、8月は1500人に上った。7~8割が10~20歳代で、レコード初体験の人も多いという。夜は50~60歳代が目立ち、信佐さんは「想定以上の人気。幅広い世代に受け入れられている」と手応えを話した。

 訪れた日は平日というのにほぼ満席。客はヘッドホンを着け、ソファでくつろぎながら音楽を楽しんでいた。店員が若い客に、レコードに表と裏があることやプレーヤーの操作方法を説明する様子も見られた。

 福岡市の大学生(21)は「初めてレコードを聴き、独特の音質や雰囲気に感動した。プレーヤーにセットしたり、針を置いたりする手間がまた面白いなと思いました」と語っていた。


壁の棚に多くのレコードが並ぶ店内


初めての体験
知らない世代に刺さる


 店は福岡市内でイベント企画・制作会社を経営する信佐さんが、「音楽をじっくり聴ける場所」とのコンセプトで作った。

 信佐さんは音楽を聴きながら酒を楽しむ音楽バー巡りが趣味という。だが、順番待ちがあり、聴ける曲数が限られてしまうことに物足りなさを感じていた。CDや配信のデジタル音源とは違うレコードの音の良さを、多くの人に知ってほしいとも思っていた。

 2023年に韓国を訪れた際、偶然入った店がレコードカフェだった。好きな曲を好きなだけ聴ける満足感があり、「日本でもやってみよう」と思い立った。

 出店場所は九州のファッションカルチャーの発信地の大名と定め、店名は語感で決めた。レコードはネット通販で新品を購入。誰でも楽しめるよう、ジャンルを問わず集めている。

 好調な出だしに信佐さんは、「レコードを知らない若い世代が魅力に気づいた。針を落とすなどの作業を『エモい(心に響く)』と感じ、SNSに投稿したいという気持ちもあるのではないか」と推測する。

 人気の定着具合を見て、東京での2店目を考えたいと意気込む信佐さん。「ここで色々な音楽をレコードで聴いて、魅力を発見してほしい」と話している。

 ルーシーズ・レコード・カフェの営業時間は午前11時~午後7時(金、土、日曜は午後10時まで)。定休日なし。混雑時は90分制になる。

人気が再燃
デジタルにはない奥行き

 アナログレコードの人気は近年、再燃している。

 日本レコード協会によると、レコード生産枚数は、ピークの1976年は1億9975万枚に上った。CDの登場で減り続け、2009年に10.2万枚まで落ち込んだ。だが、その後増加に転じ、25年は337.8万枚に持ち直している。



 レコードの復活理由について同協会は、若者が▽デジタルとは異なる、音の奥行きなどを新鮮に感じている▽ジャケットをコレクションアイテムとして楽しんでいる――などを挙げる。広報担当は「レコードで発表するアーティストも増え、人気は継続している」と話している。


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