親しい人と思い出を撮る体験型レジャー 気軽に自分流に「セルフ写真館」が人気
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記事 INDEX
- 機材も小道具も完備
- 家族、友人、恋人と
- 密を避け非日常性を
福岡県内の最新の話題や暮らしの情報を、キーワードを切り口に取り上げる新企画「気になる! サーチ」。初回は、カメラマンが不在の「セルフ写真館」を紹介する。
機材も小道具も完備
3月中旬、福岡市中央区渡辺通のセルフ写真館「sajin(サジン)」で、田川市の堀留寧妙(なな)さん(23)と有明嵐士(あらし)さん(20)が、一眼レフカメラに向かってポーズを決めていた。
堀留さんはこの日、大学の卒業式があり、お祝いにと2人で来店。セルフ写真館はカメラマンがおらず、リモコンを操作しながら自分でシャッターを切るスタイルの店で、6畳ほどのスタジオにはサングラスやお面、造花といった小道具や照明器具も用意されている。
2人は小道具を使って様々なカットに挑戦し、「自分たちのペースで好きなだけ撮れて楽しい」と声を弾ませた。
家族、友人、恋人と
サジンは韓国語で「写真」を意味し、店を営む沢井國宝(くにほ)さん(36)は、韓国への留学をあっせんする会社の社長でもある。コロナ禍で事業が滞る中、韓国で3年ほど前に生まれたセルフ写真館が東京や大阪で増えていることに着目し、「福岡でも人気が出るはず」と昨年4月に店をオープンした。
料金は15分3000円からで、小道具類は自由に利用でき、撮影枚数に制限はない。撮影したデータは無線通信機能「AirDrop(エアドロップ)」などを利用して全て受け取れるのも喜ばれているという。
主な利用者は友達や恋人同士で来店する10~20歳代だが、「世代も目的も多彩ですよ」と沢井さん。出産祝いなどで記念撮影する家族連れ、SNSのプロフィル写真を撮る個人客、アイドルのグッズを持ち込んで「推し活」を楽しむファンもいるそうだ。
卒業シーズンのこの日は、はかま姿の女性が目立ち、保護者に付き添われて卒業式後にランドセルを背負ったまま来店した小学6年生のグループもいた。
密を避け非日常性を
写真の流行に詳しい博報堂(東京)の社内プロジェクト「ヒット習慣メーカーズ」メンバー山本健太さん(28)によると、セルフ写真館は、コロナ禍で外出が制限される中でも密を避けながら非日常性を楽しめる場所として急速に広がった。
福岡県内ではほかにも、シャボン玉やスモークなどの演出が利用できたり、好きな背景を選べたりするセルフ写真館も登場している。山本さんは「本格的な機材や小道具がそろったスタジオで、気兼ねなく撮影を楽しめる点が、『体験型レジャー』として受けているのでは」と分析する。
プロの出張サービスも
「やっぱりプロのカメラマンに撮ってもらいたい」という要望を気軽にかなえてくれる「出張撮影サービス」も広がっている。業者の一つ、ピクスタ(東京)が運営するサービス「fotowa(フォトワ)」は、登録カメラマンの中から好みの人を選んで撮影を依頼できる仕組みだ。
県内では、カメラマン約40人が登録しており、フォトワのサイトでそれぞれの作風などのプロフィルを確認して撮影を頼みたい人を選び、スケジュールを調整する。
同社が昨年、県内で撮影を手がけたのは605件で、2019年の約2倍に増えた。出産記念やお宮参り、七五三、卒入学などでの依頼が多く、コロナ禍で会食や旅行を見合わせる代わりに、記念撮影を希望する人もいたそうだ。
広報担当者は「思い出づくりがままならない中、写真だけでも残したいとのニーズが高まっているのではないか」と説明する。
(写真:清水敏明)
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