【大分】佐賀関の猫守りたい 火災の被災者がグッズを販売
2025年11月に196棟の住宅などが焼損する大規模火災に見舞われた大分市佐賀関で、住民たちが世話してきた猫を守ろうとする被災者の女性がいる。費用捻出のため、知人のデザイナーと猫をモデルにしたグッズを製作するなど奮闘。女性は「災難にめげずに生きる猫たちが、佐賀関の復興のシンボルになってほしい」と願う。
漁師町の守り神「関ねこ」
「あら、はっちゃん。きょうもかわいいね」。6月3日午後、被害が特に大きかった佐賀関・田中地区の一角で、自営業大野富子さん(59)は、トラハチと名付けられ、のんびりと寝転がる猫に声をかけた。近くには、焼け落ちた住宅が今も残る。
高級魚「関あじ」「関さば」の産地・佐賀関では、野良猫が「関ねこ」と呼ばれ、網、ロープなど漁具をかじるネズミを退治する「用心棒」や大漁の守り神として大切にされてきた。田中地区だけでも現在、20匹以上確認されている。
大野さんは19年、出身地の大分県別府市から、夫の仕事の都合で、家族3人で田中地区に移り住んだ。当時は、住宅と住宅の隙間や道端に猫の排せつ物が落ちたままで、臭うこともあったという。
「犬派」の大野さんだったが、猫の愛らしさに癒やされて、少しでも猫たちのためになればと近隣住民らの協力を得て環境改善に動いた。自宅庭や、所有者の許可を得た空き地に猫用のトイレを設置し、餌場も整備。過度の繁殖を防ぐため、自費で去勢・不妊手術も受けさせた。関ねこは22年10月、大分市から、野良猫を適正に管理する「地域猫」として認められた。
たくましい姿 勇気もらう
25年11月18日夕、火災が起きた。火は一気に燃え広がり、多くの住民が住み慣れた我が家を追われた。
猫たちも行き場を失った。火元となった住宅から約30メートル南にあり、猫が餌や寝床を求めて出入りしていた大野さん宅は全焼した。一帯は火災後、建物が崩壊する危険性があるとして数日間、立ち入り禁止になった。後日、大野さんは、おおいた動物愛護センター(大分市)の職員らと逃げた猫を捜したが、2匹は半年以上たった今も行方が分からない。
「移住してきた自分たちを優しく受け入れてくれた佐賀関と、かわいい猫たちを思うと、離れる気持ちになれなかった」と言い切る大野さんは26年2月、全焼した旧宅近くの空き家を購入した。車で約5分の仮住まいから田中地区に通い、新居のリフォームの傍ら、猫を世話する日々を過ごす。たくましく生きる猫から、勇気ももらえたという。
大野さんが「人と猫が和やかに暮らす町の魅力を多くの人に知ってもらい、再び佐賀関に活気を取り戻したい」と周囲に話したところ、地区に住むデザイナー、橋本康聖(こうせい)さん(50)が応じた。「関」の字を猫の顔に見立てたロゴマークや、実在する猫のイラストを作ってくれた。
売り上げ 餌代や治療費に
今春、ロゴやイラストを使ったキーホルダー(800円、5種類)とステッカー(300円、1種類)を製作。キーホルダーには、「ボス的存在」「ちょっと臆病」「どこにいるかわからないレアねこ」といった猫のプロフィルも添えた。
売り上げは、餌代や治療費などに充てる予定だ。橋本さんは「反響があれば、猫やグッズの種類を増やしたい」と意気込み、大野さんは「復興に向かう佐賀関と関ねこを温かく見守ってほしい」と語った。
グッズは、大分市志生木(しゅうき)の動物シェルター「RIRIMAM(リリマム)の樹」で販売。イベントなどでの販売時は、インスタグラムで告知する。




