【佐賀】「さがをプリン県に!」酪農家ら実行委が奮闘

 「佐賀をプリン県に!」を合言葉に、プリンの材料になる生乳などの農家や愛好家らで結成した「プリン県さが実行委員会」の活動が話題になっている。佐賀県内のユニークなプリンを紹介するマップを作成したほか、6月はオリジナルPRソングも完成させた。県内は江戸時代、長崎の出島から砂糖が運ばれた旧長崎街道(シュガーロード)が通り、特殊な砂糖文化が花開いた歴史があることから、関係者は「プリンをきっかけに佐賀の魅力を全国、アジアにアピールしたい」と意気込む。

体操動画でPR


「プリン体操」を踊る実行委のメンバーら。左奥が大富さん、右手前が平田さん

 〽プリン×3 みんなにっこり笑顔 プリン×3 シュガーロードに乗って プリン×3 今日もわくわくとまらない ぷりぷりプリン体操 農産物大国の佐賀県は プリン県でもあるったい

 6月9日夕、神埼市の店舗駐車場。軽快な音楽とコミカルな歌詞に合わせ、男女4人が踊っていた。実行委が制作したPRソング「プリン体操」の動画撮影。「プリン県」のイメージを広めるのが狙いで、6月12日に動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開された

 吉野ヶ里町出身のピアニスト、KOSEIさん(31)が方言を取り入れて作詞作曲し、元ダンス講師の平田圭一朗さん(35)らが、プリンを意味する手話などを織り込んだ振り付けを考案した。動画に出演した神埼市の小学5年の男児(10)は「たくさんの人に踊ってもらい、佐賀のプリンを好きになってほしい」と話していた。


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「甘い物好き」

 実行委は2020年秋、みやき町で牧場を夫婦で経営する大富藍子さん(43)が発足させた。18年1月、牧場の生乳と佐賀の卵などを使ったプリンの製造販売を始めたところ、客から「あの店もおいしい」などと情報が集まった。

 大富さんは「シュガーロードの影響もあり、県民は甘い物好き。さらに佐賀はプリンの素材となる養鶏や酪農も行われている。調べてみるとプリンを扱う店が多かったので、地域活性化のきっかけにもってこいだと思った」と振り返る。


大富さんが手がけている「牧場プリン3」

 実行委の会員は現在約20人。21年8月には観光振興を目的に、会員が厳選した県内のプリン49種類を紹介する「さがプリンマップ」を作成。これが話題になり、商業施設などから掲載店の商品を販売したいとの依頼が増えた。これまでに横浜や大阪など全国各地で30回ほど販売イベントを開いた。

 昨年夏にはマップ第2弾の作成に着手。嬉野茶や日本酒など、県産品を一つでも使っているプリンに限定し、57種類(第1弾と一部重複)を取り上げ、今年3月に完成させた。牛乳や卵、ハチミツなど、使われている県産品が一目でわかるように表示した。2万枚用意し掲載店舗で配布したほか、イベントなどでも配ったところ好評を得た。現在、計5万枚を目標に増刷予定だ。


佐賀県内の販売店舗を示す「さがプリンマップ」第2弾の地図。赤や青のマークは販売店舗

 掲載店の一つで神埼市のイチゴ農家、香月涼子さん(53)は「プリンには卵や牛乳、果物など多くの農産物が使われており、農家の応援にもなる」と喜ぶ。

 佐賀市の団体職員の女性(42)は「マップを見てこんなにプリンを扱う店が多いことを知った。それぞれの好みを見つけてまわるのも楽しそう」と話す。

行政も後押し

 第2弾のマップ作成では、地域活性化などを目的とした県の補助金50万円を活用することができた。佐賀市観光協会からはマップの裏表紙に協賛広告を得た。地域資源を使った新規ビジネス支援などを行う佐賀銀行設立の地域商社も、動画で複数回紹介するなど取り組みを応援している。

 「プリン県さが」は県内各地で浸透しており、大富さんが今月、地元の高校で取り組みを紹介した際には、全校生徒の3分の1が活動を知っていた。県外での認知度アップに燃える大富さんは「国民誰に聞いても、『佐賀と言えばプリン県』と言ってもらえるような状況にしたい」と話している。



名乗り次々 地域おこし

 地元の食べ物など特産品を県名に冠して地域活性化につなげる動きは各地で盛んだ。特に有名なのは「讃岐うどん」で知られる香川県。県が2011年10月に、「うどん県」への架空の改名を宣言するプロモーションビデオを制作し注目を集めた。

 この動きに対抗したのが、うどんやきしめんなど「和風めん」の出荷額が全国1位(2020年)の埼玉県。同県は昨年、県内の個性豊かなうどん20種類をまとめたパンフレット「うどん共和国さいたま」を刊行した。当初は5000部を用意したが予想以上の反響で、昨年度までに計4万部を増刷した。

 県観光課は「多彩さで勝負したいという気持ちから『共和国』とした。互いに切磋琢磨(せっさたくま)して地域おこしにつなげられれば」とする。

 また、19年には山梨県が「ワイン県」を宣言、冬の味覚・ズワイガニの産地、鳥取県は14年から「蟹取県(かにとりけん)」を名乗っている。


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