【佐賀】イカ料理の人気店・呼子の「萬坊」リニューアルへ

海に浮かぶ海中レストラン萬坊

 佐賀・呼子の名物「いかしゅうまい」で知られる萬坊(佐賀県唐津市)が運営する日本で唯一とされる海中レストランが今夏以降、新たなレストラン船に生まれ変わる。40年以上営業してきた現在の店舗は今年5月頃、閉める予定だ。創業した父の後を継ぎ、経営のかじ取りを担う社長の太田順子さんは「さらに長く愛される店にしたい」と意気込んでいる。

泳ぐ魚間近で

 青く穏やかな呼子の海を訪れると、萬坊の白いレストランが浮かんでいる。陸地から桟橋を渡り店内に入ると、海上フロア中央には海につながるいけすを上からのぞき込めるようになっている。水深約3メートルの海中フロアにおりると、中央にある4枚の大きな窓(縦約90センチ、横約150センチ)の向こうでいけすの中を泳ぐアジやタイなどの魚たちを間近で見ることができる。開店すると、次々と客が訪れ、いかしゅうまいやイカの生き作りに舌鼓を打った。


新たなレストラン船への思いを語る太田順子さん。店内の窓の向こうでは魚が泳いでいる

 太田さんは「多くのお客様に愛されて続けてこられた」と話す。


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水産と観光結ぶ 

 海中レストランの構想が浮上したのは1980年。養殖業などを手がけていた順子さんの父・善久さん(2021年に77歳で死去)が、水産業と観光を結びつけた「水産観光」として海中レストランに目を付けたのがきっかけだった。

 ただ、開店までの道のりは険しかった。建築物と船舶が融合したような施設は前例がなく、消防法などにも規定がなかった。そこで善久さんは造船会社の担当者らとともに国や県と交渉を重ね、83年にようやくオープンにこぎ着けた。その後、看板商品の一つであるいかしゅうまいが誕生。イカや魚のすり身に細かく切ったワンタンの皮をまぶした商品で、大手ビール会社のテレビCMで放映されると全国区となった。



 順子さんは27歳の頃に佐賀に戻り、家業を手伝うようになった。そして33歳で善久さんから経営のバトンを引き継いだ。フグの陸上養殖や宿泊業といった不採算事業の整理を進め、黒字転換を実現させた。さらに事業を拡大させるために2019年、JR九州の傘下に入った。順子さんは「JR九州は地域に根ざした企業で、萬坊が大切にしている地域貢献の理念をくみ取ってもらえた」と話す。


 萬坊に出向し取締役を務めた経験があるJR九州の事業開発本部企画部企画課担当課長の表建二さんは「萬坊が培ってきたブランド力や地域性を大切にしながら、グループとして連携することで、地域の食文化の発展や観光振興に貢献できるものと考えている」と語る。

地域のシンボル

 JR九州の子会社となり、同社グループの小売店での販売など事業を広げてきた。その次なる一手として取りかかったのが老朽化している海中レストランを、新レストラン船にかえるプロジェクトだ。

 レストラン船は井筒造船所(長崎市)が手がける。船は支柱に固定する。延べ床面積は現在と同規模の約800平方メートルを見込むが、席の間隔を広げるため、席数を現在の約190席より少し減らす。一部の個室を除き、テーブル席にすることで高齢者も快適に過ごせるようにする。

 海中フロアにある窓はいずれも現在より大きくするほか、窓には浸水を防ぐためのシャッターを導入し、安全対策も強化する方針だ。さらに、新たに約400平方メートルのいけすをレストランと桟橋でつなぎ、釣り体験の実施も計画している。投資額は非公表。



 今夏以降に完成した船を現在のレストランの場所に設置して営業を再開する予定だ。昨年10月には井筒造船所で起工式があり、安全を祈願する神事などが行われた。完成後には、お披露目も検討している。


 順子さんは「新しいレストランには今まで以上に楽しんでもらえる仕掛けを施す予定だ。父から引き継いだ大切なお店なので、地域のシンボルとして、これからの40年、50年先も愛されるように育てていきたい。お客様には完成を楽しみにしていてほしい」と話している。


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