食物アレルギーの子どもにも、洋菓子を楽しんでほしい――。福岡県田川市のパティシエ・松岡由季乃さん(29)が、卵や乳製品、小麦粉などアレルギー症状の原因物質に位置づけられている28品目を一切使わないクッキーを作り、販売している。
クッキー作りに取りかかったのは昨年夏。知人から「かいかい(かゆいかゆい)が出る」と言ってプレゼントのクッキーを受け取らなかった幼子の話を聞いたことが、きっかけになった。
自身も5歳と3歳の子を育てる母親。「子どもにお菓子を作ってあげられるお母さんになりたくて」パティシエを志したこともあり、人ごとと思えなかった。
後藤寺商店街にある実家の衣料品店の厨房(ちゅうぼう)で、試行錯誤が始まった。それまでパウンドケーキなどを製造販売していたが、アレルギー物質の混入を防ぐため中止。米粉や米油を中心に原料を取り寄せ、1グラム単位で配合量の調整を繰り返した。
代替材料では、しょっぱくなったり甘すぎたり、成形できなかったり――。4か月後、ようやく納得できる味と食感の「紫いも味」を完成させた。
別の種類のサツマイモを使って「さつまいも味」も作り、そろって今年3月に売り出した。母の夕美さん(56)は紫色の化粧箱、父の英樹さん(56)は藤の花をデザインした紙袋を作った。商品第1号の紫いも味と、「後藤寺」の「藤」にちなんだ。
直径約4センチの3枚入りで紫いも味は税込み280円、さつまいも味は同260円。衣料品店に置くと売れ行きは好調。松岡さんは「誰もがおいしく、安心して食べられるお菓子を提供していきたい」と力を込める。
商品の問い合わせは、チャイム・スポット(0947-45-3639)へ。