【長崎】夫婦で育てるシバザクラ 対馬の花見スポットに
多くの人にシバザクラを楽しんでもらおうと、長崎県対馬市の南端で手入れに汗を流す夫婦がいる。趣味で植えたものが広がり、春の満開時には濃いピンクの花々が緩やかな山の斜面を彩る。「花見に来てくださる皆さんの笑顔が花づくりの活力です」。春本番はもうすぐだ。
夫婦は、同市厳原町豆酘(つつ)の小森午朗さんと喜代子さん。
豆酘沖を望む見晴らしの良い斜面地で、落ち葉拾いや雑草抜きといった手入れに励む。「ずっと下を向いての作業で疲れるが、指のリハビリと思ってやっている」と午朗さん。喜代子さんは「花に『かわいいね』と話しかけながら手を動かしている」と笑う。
植栽しているのは、小森さん方の休耕地約400平方メートル。もともとは段々畑だったが、荒れて殺風景になったため、癒やしの空間にしようと、16年前から花畑に作り替えた。
盆栽や庭造りが趣味の午朗さんが雑木を切り、群生していた竹の根を掘り起こすなどして整地。花好きな喜代子さんがアジサイやヒマワリ、シバザクラなどを植えた。
試行錯誤する中でシバザクラに絞り、5年ほどかけて増やし続けた。雑草取りや落ち葉拾いのほか、花が枯れたり、薄くなったりしたところは丹念に補植。モグラがあちこちに掘った穴の修復も欠かせない。
開花は4月初め頃
開花は4月初め頃。鮮やかな濃いピンクや青紫、白色の花々が所狭しと咲き誇り、じゅうたんを敷き詰めたようになる。口コミなどで知られるようになり、一般に開放すると、花見客が年々増え、今では人気スポットになった。
例年、家族連れや福祉施設の利用者、韓国人観光客らが花をバックにして写真に納まったり、甘い香りを楽しんだりする光景がみられる。見学したことがある市内の50歳代の女性は「現代の花咲かじいさんとばあさんみたい。お二人の日頃のご苦労があってのことだと思います」と感謝する。
こうした取り組みが評価され、2022年4月には対馬ロータリークラブから夫婦に表彰状が贈られた。
午朗さんと喜代子さんは「皆さんが喜び、写真を撮るのを見ると、こっちもうれしくなる。花のお話で深まるのも楽しみ。元気な間は花づくりを続けます」と笑顔を見せている。