【佐賀】「須古寿し」カフェで味わう 白石町にオープン
佐賀県白石町の須古地区に伝わる郷土料理「須古寿(ず)し」をメインにしたカフェが、同地区に開店した。店主の江口智子さん(48)は「多くの人に気軽に楽しんでもらうことで、伝統ある料理を未来に残していきたい」と語る。
須古寿しは、地元の海の幸、山の幸を使った箱寿し。伝承では、500年以上前、この地を治めていた領主が米の品質改良に尽力。よい米が取れるようになったことに感謝した領民が献上したのが始まりと伝わる。
酢飯を「もろぶた」と呼ばれる大きな木箱に詰めて作る。具材はゴボウ、シイタケ、ニンジン、キュウリ、紅ショウガ、錦糸卵、奈良漬や、有明海産ムツゴロウの素焼きを甘辛く煮付けたものなど。今でも地元では、祭りやお祝い、親戚が帰省した時などに、仕出し店からとったり、自宅で作ったりするという。
江口さんは福岡市出身で、管理栄養士の資格を持っている。二十数年前、結婚を機に須古地区に住むようになって、須古寿しを知った。子どもたちが通う小学校で行われた親子教室で作り方を学び、中学校から実習での指導を依頼されるようになった。
「郷土料理を気軽に」
開店の準備を始めたのは2年ほど前。親族から「須古寿しを食べたい。どこで食べられるの」と聞かれ、提供する飲食店がないことに気付いた。仕出し店も1軒のみという。
地元には、2001年に約40年ぶりに湧水が復活した「縫ノ池」や、戦国武将の居城だった須古城跡などの観光資源があるのに、観光客が気軽に立ち寄れる店がないこともあり、「歴史がある須古寿しをもっと多くの人に食べてもらえて、地域を訪れた人や地元の人が集える場所を作りたい」と考えるようになった。
須古寿しは大人数向けの料理のため「もろぶた」は大きく、へらですくって皿に移しながら食べる。だがカフェでは、1人用の小さな木箱を用意。へらですくうという須古寿しならでは食べ方を、一人一人が楽しめるようにしたいとこだわった。
自宅で、小屋として使っていた建物を増改築し、3月下旬にオープン。店名「とこのとこ」は、江口さんのニックネーム「とこさん」にちなんだ。長男の歩さん(21)と切り盛りしている。店には、イラストレーターとしても活動する江口さんがデザインした小物なども並ぶ。
江口さんは「いつでも気軽に須古寿しを食べられる場所にしたい」と話している。メニューは須古寿しに日替わりのおかず、サラダ、デザートがついたランチ(2000円)など。数に限りがあり、予約が確実。月、火曜定休。問い合わせは、とこのとこ(090-3413-3245)へ。