【熊本】菊陽町・原水駅周辺を再開発へ TSMCの進出で
熊本県菊陽町は9月30日、JR豊肥線の原水駅周辺で土地区画整理事業を実施すると発表した。台湾積体電路製造(TSMC)の進出で企業集積や人口増加が続く中、駅周辺を再開発し、受け皿となる市街地整備を急ぐ。商業施設やホテル、研究機関などの誘致を進める方針だ。2026年度の事業認可を目指す。
商業施設やホテル、大学を誘致
事業は豊肥線沿いの北側で、原水駅から西に約1.9キロ・メートルで行う。対象区域約70ヘクタールのうち、約65%が農地で、約190人の地権者がいる。現在は建物の建設が制限される「市街化調整区域」に指定されており、開発可能な「市街化区域」に変更する方針だ。区域の変更や区画整理には県の決定や事業認可が必要となる。
合わせて発表した「将来ビジョン」では、原水駅と、JR九州が三里木―原水駅間に27年春に開業予定の新駅を中心に三つのエリアで街づくりを進めるとした。
原水駅周辺は、TSMC工場やセミコンテクノパークに近いことから、高層マンションや住宅が集まる「職住近接エリア」とする。新駅周辺は商業施設やホテルを誘致し、「賑わいエリア」とする計画だ。両駅の間には、企業の研究拠点や大学のサテライトキャンパスが立地する「知の集積エリア」を整備し、半導体産業との相乗効果を見込む。
それぞれの区域や工場周辺を結ぶ交通システムの導入も検討する。誘致する企業や大学は今後、検討する。区画整理は26年度の事業認可、28年度の整備開始を目指しており、実際に再開発するには時間がかかる見通しだ。
菊陽町周辺では半導体関連工場の立地が相次ぐ。年内に稼働予定のTSMC第1工場に加え、27年には第2工場も完成する。ソニーグループも隣接する合志市で画像センサーの新工場を計画している。町は新たな工業団地の整備も進めており、今後も関連企業の集積が加速する見込みだ。
人口増加が続く中、マンションや商業施設の需要は急速に高まっている。一方、地権者との交渉が難航すれば、再開発の長期化も懸念される。農地の減少も避けられず、代替地の確保なども課題となりそうだ。
9月30日には町役場で地権者向けの説明会が開かれ、約50人が参加した。吉本孝寿町長は「半導体産業集積地にふさわしい、先進的な街づくりを実現したい。地権者には丁寧に説明していく」と話した。