【熊本】おかえり!SL人吉 11月17日にお披露目

 JR九州の観光列車「SL人吉」の蒸気機関車(SL)が10月1日午後から熊本県人吉市に移送され、市は2日、展示に向けたJR人吉駅前での設置作業を報道陣に公開した。SLは3月に営業運転を終え、JRから市に無償譲渡されており、九州豪雨で運行が停止されて以来、約4年3か月ぶりにゆかりの地に戻った。

4年3か月ぶりに帰郷


展示のためトレーラーに載せて運ばれる蒸気機関車の車輪(2日未明)

 SLは1日、保管されていた北九州市のJR九州小倉総合車両センターを出発した。譲渡に向けて解体され、3分割してトレーラーで人吉市に運ばれた。2日朝には、「テンダー」と呼ばれる炭水車をクレーンで展示用のレールに下ろす作業が行われた。今後、現地で組み立てられ、11月17日の式典でお披露目される。

“復興の起爆剤”に期待

 SL人吉は引退決定後、市が地元での保存を要望し、JR側からの無償譲渡が決まった。市は展示開始後、市民向けのイベントを予定するなど、地域振興の機運醸成につなげたい考えだ。豪雨からの復興の起爆剤としての期待も高まっている。


クレーンで展示用のレールの上に下ろされる「SL人吉」のテンダー(左)(10月2日午前)

 作業を見学した松岡隼人市長は「よく帰ってきた。地域の復旧・復興をしっかり牽引(けんいん)してほしい」と話した。

 復興に向けた人吉市の施策にかかわった県立大の柴田祐教授(地域計画学)は、「SL展示を生かし、観光客誘致や復興にどうつなげるかだ。(隣接する)人吉鉄道ミュージアムや人吉駅との一体的な整備、土産の開発やガイドの養成、メンテナンス費用の確保などは市だけでは実現できない。かかわる人が稼げる持続的な仕組みや、市民に末永く愛されるような運用を考えることが必要だ」と話す。


advertisement