【熊本】「くまモン」誕生15年!3月15、16日に記念行事

 熊本県のPRキャラクター「くまモン」が3月12日、2010年のデビューから15周年を迎える。自治体をPRするゆるキャラの代表的な存在となり、関連グッズの売り上げは累計1兆円を超えて不動の人気を確立した。海外でのファン獲得にも力を入れ、「皆さんにこれまで以上にサプライズ&ハッピーを届けるモン!」と意欲を燃やす。記念行事が15、16日に開かれる。

応援ありがとうだモン!

 「くーまモーン!」。3月8日、熊本市中央区の熊本城ホールで行われた企画展のオープニングセレモニー。約60人のファンが呼びかけると、くまモンが颯爽(さっそう)と登場して歓声が上がった。「いつもおうえんしてくまさってありがとうだモン!」。そう書いた紙を掲げて感謝し、一人ひとりとハイタッチして歓迎した。


再現された「部長室」でファンに囲まれるくまモン


 記念行事に向け、8日に始まった誕生祭ウィーク。企画展では、歴史を紹介するパネルや写真を展示している。知識を問う「くまモン検定」の体験、仕事場を再現した部長室などもあり、大勢のファンが訪れた。


 10年以上前からのファンで、誕生祭に合わせて来県した愛媛県新居浜市の主婦(53)は「熊本のために頑張る姿とファンに寄り添う優しさに元気をもらっている。世界中にファンがもっと増えてほしい」と話した。

まさか人気が出るとは…

 誕生のきっかけは、「おまけ」の提案だった。

 11年3月の九州新幹線の全線開通をにらみ、熊本県は観光戦略の一環で、天草市出身の放送作家、小山薫堂さんに、ポスターなどで使用するキャッチフレーズとロゴの作成を依頼した。小山さんが10年2月、「こんなのも作ってみました」と示した数枚のイラストが「くまモン」だった。

 目は縦長で細く、全身は真っ黒。地域の特産品や観光名所は連想できず、そもそも九州にいないとされる熊がモチーフだ。県庁内には慎重論もあったが、蒲島郁夫知事(当時)が「もらっておこう」と採用した。当時の担当者で、県くまモン課の鳥井薫順課長は「家族からは気味悪がられ、人気が出るとは到底思えなかった」と苦笑する。


企画展の展示を紹介するくまモン


 デビューしたての体形はひょろ長く、イラストとはほど遠かった。急ピッチで作ったためで、子どもが泣き出すこともあった。数か月後、「おいしい県産品を食べて丸くなった」として現在の姿に。10年9月からは全線開通で熊本―新大阪駅間が直通となることを見据え、大阪市で予告なしに登場するゲリラ作戦を敢行。ツイッター(現・X)上で目撃情報が相次ぎ、話題に火がついた。


 臨時職員から部長に昇進したり、仕事がつらくて失踪したり――。行政のゆるキャラとのイメージを覆し、「やんちゃな男の子」という公式プロフィル通り、温泉に飛び込み、バンジージャンプにも挑戦した。菓子や飲料メーカーとのコラボにも力を入れた。キャラクター利用料を無料とし、商品パッケージにイラストを載せて認知度が向上した。

海外出張で”世界制覇”へ

 日本リサーチセンター(東京都)が2024年に公表したご当地キャラの調査で、認知度はアンケート回答者の95%に上り、調査が始まった14年以降で日本一を10回達成。「くまモンを見ずに熊本を移動するのは不可能」「各家庭に一つはグッズがある」といったうわさを裏付けるように、関連グッズの売り上げは21年に1兆円を超え、24年は1.5兆円に達する見通しだ。

 県は、視線を海外市場に向ける。新年度の当初予算案では約4億4000万円を計上。半導体受託製造の世界最大手・台湾積体電路製造(TSMC)進出で交流が深まる台湾に加え、韓国や中国、タイなどを念頭に出張し、PRイベントを計画している。くまモンは「目指せ!世界制覇だモン!」と意気込む。

 くまモンを研究する尚絅大の柳田紀代子・現代文化学部長(公共政策)は「官公庁はキャラクターの行動を制限しがちだが、くまモンは自由奔放。地域行事にも顔を出す地道な取り組みが県民の共感を得ており、人気の根底となっている」と分析する。


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