【鹿児島】南大隅町に映画で活気を! 監督が協会を設立

 鹿児島県南大隅町在住の映画監督、山下大裕(だいすけ)さん(32)が4月、任意団体「南大隅映画協会」を設立した。福井県敦賀市出身で、同町に移住して約8年。県内一の高齢化率で過疎化が進む町で、「少しでも暮らしを豊かにしてもらいたい」と願って、5月5日に初の映画上映会を開く。

移住者・山下さん「暮らしを豊かに」


南大隅町で映画の上映会を開く山下さん

 山下さんは、神奈川県の日本映画大学を卒業後、劇場スタッフや自治体の観光PR動画製作などを手がけ、2017年7月、地域おこし協力隊として南大隅町に移り住んだ。母親が同町の出身で、幼少期は毎年のように夏休みの約1か月間、母親の実家で家族みんなで過ごしていた。「山も海もある風景に心が癒やされていた」といい、「日本の原風景のようなこの地で映画を撮りたい」との思いがあったという。

 20年までに作品を制作することを目標としていたため、18年12月に地域おこし協力隊を辞職。その後も同町に住み続けながら、同町を舞台に協力隊の奮闘を描いた映画「ひとしずく」の制作に着手した。新型コロナの流行拡大で一時中断したものの、23年11月に初公開され、これまでに16都県で71回上映し、約3300人の観客を動員した。

 山下さんは同町になじんでいく一方で、思い描いていた田舎暮らしに違和感も覚えていった。一人暮らしの高齢者に接すると「もう何日も誰とも会話していない」「近所の人と顔も合わせない」など、人とのつながりが強いと思っていた田舎暮らしと現実は違った。

 また、地元の銀行支店の撤退や人手不足による高齢者施設の閉鎖、飲食店の閉店を次々と目の当たりにした。町が10~40歳代を対象にした町民アンケートでも、町の改善点について「娯楽施設」「不便」などの言葉が並んだ。

映画館のない町 上映会で交流も

 目に見えて衰退していく町に危機感を募らせた山下さんは「映画は泣いたり、笑ったり、怒ったりと感情を揺さぶるもので、町民の暮らしや心を豊かにできる」と考え、映画館のない同町で映画の上映会を開くことを決意した。

 高齢化が進む町という点を踏まえ、第1弾は、認知症の母と離婚して子連れの息子との日常を描いた映画「ペコロスの母に会いに行く」(13年制作・森崎東監督)を選んだ。上映会の定期開催も視野に入れる。

 山下さんは「遠方の映画館に足を運べない高齢者も多い。上映会で映画に感動したり、鑑賞に来た人同士で会話を楽しんだりしてほしい」と話している。

 上映会は5月5日の午前10時、午後2時、同6時の3回。会場は南大隅町役場3階大会議室。料金は一般1500円、小中高生1200円(前日までの電話・ネット予約で300円引き)。問い合わせは、南大隅映画協会(070-4321-8815)へ。


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