歌舞伎「平成中村座」が九州初上陸 北九州・小倉に舞台を特設

勘九郎、七之助、獅童で「封印切」

――小倉城が見守る今回の舞台では、どんな芝居がかかるのでしょう。毎年注目を集める平成中村座ですから、全国の演劇・芝居ファンが注目するところです。歌舞伎には昼の部と夜の部があり、それぞれ演目が異なります。まず昼の部では、三つの演目がかかります。最初は「神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)」。

 古典的な舞台ですけれど、女の情念、うちに激しい魂の炎を秘めた典型的な歌舞伎の女形を七之助が演じます。意外ですけど初役(初めて演じること)なんですよ。彼がこの作品をチョイスしたのは面白いと思いましたね。


記者会見で語る勘九郎さん

――兄の勘九郎さんも期待する作品。七之助さんの役は、愛しい人をなりふり構わず守ろうとする娘・お舟の役です。スリルのある展開で、初めて見る人にもわかりやすい芝居の一つです。

 二つ目は「お祭り」。江戸の三大祭の一つ、山王祭を舞台にした舞踊です。勘九郎さんの祖父にあたる十七代目中村勘三郎さんが得意としていた演目です。「待ってました!」の大向こう(客席からの声)が口火になって始まるという、歌舞伎ならではの演目です。

 踊りのようで踊りじゃない。難しいものなんです。祖父の得意としていた演目で、清元との掛け合いとともに、夢の世界に連れていくような雰囲気がある。父は、「(祖父のようには)できない」と、ずっと言っていました。そしてあるとき、舞台袖で見ていたら「ほら、汗を一滴もかいてないだろう、これができるようになったんだよ」って。それが父が50歳をすぎてからのことでした。今回、私は37歳(会見時)でやるわけです。曽祖父の(尾上)菊五郎が残した「踊り踊りてあの世まで」という辞世の句がありますが、もうそこに到達するぐらいに、修業のひとつとして気持ちよく踊れたらいいですね。

――そして三つ目は近松門左衛門原作のお話。「恋飛脚大和往来 封印切」です。「封印切」は上方歌舞伎の名作。和事とよばれる柔らかく、味のある芸が醍醐味です。

 獅童さんが「封印切」を演じたいといったのは意外でした。第2回の平成中村座で、若手の試演会で「義経千本桜」の通しを演じて、終わった後に(大変だったので)握手を交わした思い出があります。あのときの3人で、北九州市の小倉で、今度は封印切をできるというのは感慨深いですね。


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