福岡に続々と韓国カフェ 書籍も充実の「ネシガン」を訪ねた
記事 INDEX
- 「私の時間」楽しんで
- 異文化交流の場に!
- 大人気のクロッフル
福岡市内で近年、天神や薬院エリアなどに次々と現れている韓国カフェ。「福岡で韓国気分に浸れる、おしゃれなカフェ」を求める女性らが注目し、韓国の原書を扱う人気のカフェもある。中央区渡辺通の「neshigan(ネシガン)」を訪ねてみた。
「私の時間」楽しんで
福岡市地下鉄・天神南駅から、細い路地を南に歩いて5分ほど。店のオーナーは、父親が韓国人、母親が日本人の沢井國宝(くにほ)さん(37)。元は、韓国やアメリカへの留学をあっせんしたり、カウンセリングをしたりする仕事をしていた。
「コンビニよりもカフェが多い」と言われる”カフェ大国”の韓国。行き来するうちに魅力にはまり、「韓国カフェの文化を日本にも伝えたい」と思うように。有名店から路地裏の小さな店まで、足で稼いで50軒以上を”研究”し、福岡に昨春、理想の店をオープンした。
本場の韓国カフェをイメージした、独特な世界観の店。店名のネシガンは韓国語で「私の時間」を意味し、「来てくれた人たちがそれぞれ、“自分たちの時間”を楽しんでもらえるように」との願いを込めたという。
グレーを基調に落ち着いた雰囲気の店内には、韓国ドラマの主題曲が静かに流れる。韓国らしさを大切にするため、日本語のメニューはあえて置いていない。「スタッフに聞いてもらえれば丁寧にお答えしますよ」と沢井さんは笑う。
スタッフの7割は韓国語を話せるそうだ。コロナ禍による渡航制限が緩和され、最近は韓国からの来客も増えたという。なかには、日本語がまったく分からず、困ったあげくにカフェに駆け込んでくる旅行者も。スタッフとの意思疎通がかない、ほっと安堵(あんど)の笑顔を見せる客もいるそうだ。
窓際に設けた書籍販売コーナーには、置いておくだけでインテリアになりそうなカラフルな本が並ぶ。韓国で流行している本や、読みやすい本、人気の絵本などを、女性スタッフが選び抜いて取り寄せた。在庫を含めて100冊ほど用意しているという。
「韓国の原書をこれだけ扱っているところは、九州ではおそらくほかにないのでは」と沢井さんは話す。
日常使いできる雑貨や文具も販売。現地で人気の品々で、日本人好みのかわいらしいグッズを集めた。
異文化交流の場に!
ネシガンは「夜カフェ」も営業し、韓国映画やドラマの上映会を開いているほか、音楽好きが集まる曜日も設けている。木曜と土曜の夜には、韓国が好きな人たちが自由に参加してコミュニケーションできる時間をつくった。
コロナ禍が長引き、「韓国語をせっかく学んだのに、しゃべる機会がない」「1度も韓国に行けていない」という声を聞いた沢井さんが「なんとか応えたい」と始めた。
毎回、韓国やアメリカからの留学生ら15人前後が交流の機会を求めて集い、自由におしゃべりしたり、韓国のゲームを楽しんでいるそうだ。
「カフェを開いてよかった」――。韓国に関心を持ってくれる人が増えていると実感でき、沢井さんにとっても、うれしいひとときだという。
店では2021年頃から韓国で流行しているスイーツ「クロッフル」を提供し、一番の人気だという。クロワッサンの生地をワッフル用の器具で焼いたもので、「サクッ」とした食感が楽しめる。早速試してみると、たしかに”未体験”の感覚だった。カフェオレとの相性もぴったりで、お代わりが欲しくなるおいしさだ。
大人気のクロッフル
小雨降る平日の午後。インスタグラムで見つけて「おもしろい」「絵になりそう」と、友人と2人で福岡県久留米市から訪れた余語悠夏(よご・はるか)さん(21)はソウルに留学中で、一時帰省の際に立ち寄ってみたそうだ。
「韓国っぽくて、かわいらしい店ですね。クロッフルの味ですか? 韓国でまだ食べていないから比較できません。コーヒーは同じくらいかな」
それにしても絶品だったクロッフル。周囲の視線がなければ皿に残ったキャラメルを「ペロリ」といきたいところだったが、そこは我慢した。
本場ではどんな味がして、どのような食感が楽しめるのだろう――。福岡と釜山の間なら、大阪までの半分くらいの距離。飛行機で1時間ほど、高速船でもおよそ3時間で到着する。
「さあ次はどの店に行こうか」――。スイーツで満足したおなかをさすりながら、頭の中で本場・韓国のカフェ巡りを満喫する。そんな一人旅を空想するひとときもまた楽しかった。