水と平和を守る! 半世紀の時を超えて福岡に現れたヒーロー

ファンとの記念撮影に応じるアイアンキング(8月26日、福岡市の天神地下街で)

記事 INDEX

  • ワクワクが止まらない
  • サポートするヒーロー
  • アイアンだけに“鉄板”

 福岡地区水道企業団との縁で、テレビ放送終了から半世紀を経た今年、その雄姿を再び現した昭和のヒーローがいます。水をエネルギーにして戦う「アイアンキング」です。「水と平和を守る」という“使命”のもと、水道企業団のPR役を担っています。

《福岡地区水道企業団50年・後編》

▶前編はこちら

ワクワクが止まらない

 8月26日、福岡市の天神地下街の一角で福岡地区水道企業団が開いたイベントの会場が、アイアンキングの50年ぶりの“晴れ舞台”となりました。


天神地下街に姿を現したアイアンキング

 水道企業団の今村寛・総務部長がマイクを手に「50年の時を超えて駆けつけてくれました!」と盛り上げると、アイアンキングがさっそうと登場。詰めかけたファンらはカメラを持つ手を上に伸ばし、貴重な姿を写真に収めていました。


アイアンキング(右奥)を撮ろうと、カメラを掲げるファンら

 4回行われた撮影会には計100人以上が参加。テレビ放映当時からのファンという福岡市南区の男性(63)は「圧倒的なヒーロー『ではない』ところが斬新で、楽しく見ていた思い出の存在。隣で写真を撮れて、ワクワクしっぱなしです」と笑顔でした。

 会場には、福岡都市圏が筑後川から水の供給を受けていることを伝えるパネルが置かれ、地元の高校生たちもその恩恵や都市圏での過去の大渇水について説明。水源地や流域に贈る感謝のメッセージの記入も呼びかけ、撮影を終えたファンらが応じていました。


寄せられたメッセージには、アイアンキングとみられるイラストも

 「アイアンキングの“生”の姿を見られて、興奮が止まりません」という同市南区の自営業男性(35)は「若い子たちの説明もあり、水の大切さを再認識できました。二つの意味でよいイベントですね」と満足そうな様子でした。

 イベント運営に協力した福岡工大城東高2年の林隆太さんは「アイアンキングに、水道企業団、高校生という異色の組み合わせでしたが、ファンの皆さんがメッセージを寄せてくれるなど相乗効果が出てよかった」と振り返りました。


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サポートするヒーロー

 アイアンキングは1972年10月~73年4月にテレビ放送された全26話の番組。短い放送期間ながら、豪華な俳優陣や独特のストーリー性で、根強い人気を誇ります。


主人公とのコンビネーションが魅力

 主人公が変身するヒーローものとは一線を画し、主人公の敏腕エージェント・静弦太郎が、アイアンキングに変身する相棒・霧島五郎と協力して敵と戦います。アイアンキングが戦えるのは約1分間で、最後に敵を倒す弦太郎をうまくサポート。そのコンビネーションの良さも特徴です。


イベント会場には、福岡地区水道企業団のパンフレットとともにアイアンキングのフライヤーも

 著作権を管理する宣弘社(東京)によると、かつて放送された映像がレンタルDVDや配信サービスで見られることもあり、この半世紀で新たなファンも獲得しているそうです。今回、新調したボディースーツは、福岡が初お披露目になりました。

 一部のファンからは「かつては水不足の懸念から『福岡にアイアンキングは来られない』とも言われたが、水道企業団などの努力で水の供給量が増え、半世紀を経て福岡に来てくれて感慨深い」といった声もあったそうです。

 福岡が“初登場”の地となったのは、ポスターへの起用などで縁のあった水道企業団との関わりからです。同社の担当者は「テレビ放映開始と企業団設立の時期がほぼ同じで、過去の渇水を経て『水』(の供給)を守るという企業団の活動にもシンパシーを感じました」と話します。

アイアンだけに“鉄板”

 福岡地区水道企業団の広報役としてアイアンキングに白羽の矢が立ったのは、2018~21年度に総務課交流広報係長を務めた中川泰夫さん(59)(現・福岡市東部水処理センター勤務)の提案がきっかけでした。


アイアンキングを起用した2021年のポスター(提供:福岡地区水道企業団)

 特撮ファンの中川さんにとって、小学2年生の頃に見たアイアンキングは特別な存在。「(主人公とヒーローの)珍しいバディもので、そのかけ合いが小学生男子にウケて、曲もよく、昭和テイストなのもいい」と、魅力を語り出すと止まりません。

 起用を思い立ったきっかけの一つは、2018年11月の福岡市長選の広報に「ウルトラマン」が登場したことでした。アイアンキングの活躍は企業団設立と時期も近く、「メジャーではないけれど、印象に残る広報ができるはず」と考えました。

 21年初め、6月の「水道週間」のPR役への起用を提案するも採用に至らず、諦めきれずにSNSでつぶやいてみました。「アイアンキングはなんだか他人とは思えません。『いいね』が500以上ついたら広報用ポケットティッシュを作成します」。すると、あっという間に500超の「いいね」を達成。大きな反響を味方に「鉄は熱いうちに打て!(アイアンだけに)」と同年8月の「水の週間」に合わせて、ポスターとポケットティッシュの作成を実現させました。


「名誉おうえん隊長」として、水道企業団のパンフレットにも登場

 中川さんの異動後も関係は深まり、アイアンキングは22年9月、水道企業団の50周年記念事業の一環で「名誉おうえん隊長」に就任。企業団の歩みを伝えるパンフレットにも登場しています。

 今年8月26日のイベントにプライベートで駆けつけた中川さんは、アイアンキングとの記念撮影も果たし、「一生の思い出になる」と感無量の様子でした。


アイアンキングとの記念撮影を果たした中川さん(本人提供)


 アイアンキングへの“愛”は募るばかりで、「これからもっと盛り上がって、再放送や新作映画にもつながれば」と期待しています。もちろん水道企業団とのコラボも「長く続けてほしい」と願っています。


 「水源地域の振興につながるよう、人を呼び込む企画もしてもらえたらうれしい。これから(両者のコラボは)さらに盛り上がります。テッパンです。アイアンキングだけに!」



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