生ゴミ→堆肥→地域の輪! 福岡市に環境+交流ガーデン誕生
記事 INDEX
- 幸せが生まれる場
- 「小さな循環」から
- 堆肥持参も散策も
地域ぐるみで生ゴミなどから肥料をつくり、畑で野菜を育て、交流する――。そんな取り組みが4月、福岡市東区香住ヶ丘でスタートしました。地元の住民と企業の連携で実現し、関係者は「環境に優しく多世代交流にもなる画期的な取り組み。全国に広げていけたら」としています。
幸せが生まれる場
「教育や福祉、健康の場にもなる。幸せな香住ヶ丘を一緒につくっていきたい」
4月6日に開かれた「コミュニティガーデン 牧の鼻」の開所式で、取り組みに携わる地元企業・ローカルフードサイクリング(LFC)の代表・平由以子(ゆいこ)さん(57)は展望を語りました。
同ガーデンは、香住ヶ丘5丁目の閑静な住宅街に立地。地元住民と、生ゴミを堆肥(たいひ)にする「バッグ型コンポスト」の販売などを手がけるLFCの平さんらが連携し、所有者側から約700平方メートルを無償で借り受けて創設しました。
式には地元住民ら約60人が参加。ほうれん草やニンジンなどの種まきや花植え、大根の収穫体験などが行われました。
訪れた近くの主婦・歌津あゆみさん(41)は「自然と触れ合えるうえ、通りがかりにあいさつするだけだった地域の方とも話ができた」と喜び、長男の瑛依音(えいと)君(6)も「大根を抜くのは難しかったけれど、(みんなが)応援してくれてうれしかった」と笑顔を見せました。
「小さな循環」から
開設に関わったのは、平さんのほか、6丁目5区の町内会長・松田元(はじめ)さん(74)、3区町内会長の吉村慎一さん(71)らです。
松田さんはかねて、所有者側から「この土地を地域のために役立てられないか」と相談を受けていました。一方、吉村さんは地元にLFCがあることなどから、環境に関する新しい取り組みができないかと考えていました。
話し合いを重ね、多世代が交流でき、循環型社会に地域で向き合える同ガーデンの構想が生まれました。
LFCではかねて、「多くの人が“自分事”としてものごとに取り組むのは半径2キロほど」と想定。同ガーデン一帯の香住丘校区とほぼ同じ広さといい、関係者は「まず近所から始め、校区での”小さな循環”につなげていきたい」と期待しています。
堆肥持参も散策も
同ガーデンでは、敷地内の落ち葉や雑草を木箱に集めて堆肥にしたり、住民が自宅でつくった堆肥を持ち込んでもらったりして、野菜や花に与えます。イベントなどがない日も、地元住民は自由に散策でき、季節の花を楽しめます。今後も関係者で意見を出し合い、さらなる活用策を検討していくそうです。
「3世代、4世代が集い、何でも話せる場所にしていきたい」と松田さん。吉村さんは「環境活動、教育、高齢者の生きがいづくりなど、いろんな役割のある場。ここからコミュニティーの活性化につなげ、社会全体にも広げていけたら」と話します。
LFCでは2023年10月から香住丘公民館で堆肥づくりに関する講座を定期的に行っており、今後も継続して、地域内で循環型社会の実現に向けた取り組みを発信します。
生ゴミから肥料をつくり、育てた野菜を食べるといった循環に地域で挑む取り組みは、LFCとその関連団体・NPO法人「循環生活研究所」(福岡市)の働きかけによる事例が東京、福岡にあるものの、平さんは「今回は地域が主体となっており、こんなにいい取り組みは他にない」と力を込めます。
循環型社会の実現に向けて、平さんたちは近く、同様のガーデンの普及を進める協会を都内の団体などと設立する予定です。「ノウハウを提供し、短期間でつくれるように各地を支援していく。2030年には全国の政令市で計1500か所に増やしたい」と意気込んでいます。
循環型社会の実現に向けた歩みが、福岡からまた広がっていきそうです。