男子だけのチアリーディング 福大大濠高「クッキーズ」の20年

20年間続いてきた福大大濠高の男子チアリーディングチーム「クッキーズ」

記事 INDEX

  • 仲間とならできる!
  • チアにささげた青春
  • 夢に向かって走れ!!

 一人ではできないことが、チアならできる――。福岡大学付属大濠高校(福岡市中央区)の男子チアリーディングチーム「COOKIES(クッキーズ)」が、創立20周年を迎えます。日本チアリーディング協会の公認団体では全国唯一の男子だけのチーム。屈指の強豪校に成長し、今年も全国大会に向けて生徒たちは大技の練習に励んでいます。

仲間とならできる!

 「OBが練習の補助をしてくれたり、大会の応援に駆けつけてくれたりします。みなさんの思いを胸に、全国の舞台へ行ってきます」。3年で第20代キャプテンの楠田大翔(やまと)さん(17)が、まっすぐ前を見つめながら決意を口にしました。

 部員は現在35人ほど。東京で8月29日から9月1日まで開かれる全国大会「JAPAN CUP2024日本選手権」に照準を合わせ、体育館で連日の練習に打ち込んでいます。


体育館で空中技の練習を続ける生徒たち


 チアリーディングはチアダンスと異なり、組み体操のように人の上に人が立つ「スタンツ」、上にのった人を空中に飛ばす「バスケットトス」などの大技があります。マット運動や体操の要素が加わって、飛んだり跳ねたり、ダイナミックな動きが見どころです。


 競技は、決められた時間内に「いかに観客を魅了し、引き付けることができるか」を競います。笑顔や元気の良さ、技の難易度や正確性、一体感のある動きがとれているか――などが評価の対象になります。


息を合わせて2~3メートルの高さに飛び出す


 楠田さんは「みんなで支え合わないと演技ができません。そういった部分にチアの楽しさがあります」と話します。


 仲間がつくる二段構えのピラミッドの頂点にバク転をしながら飛び乗ったり、チームメートの手のひらを”踏み台”にして仲間が腕を突き上げるのと同時に地上2~3メートルの高さに飛び出したり。


仲間が支えてくれるから、見られなかった景色が見える


 難しい技には不安と恐怖がつきまといます。それでも演技に挑めるのは、体を預ける仲間との信頼関係があるから。「ノーミスで終わらせよう」「気持ちで負けるな」「笑顔で!」――。朝から始まった練習は、休憩を挟みながら夜まで続きました。


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チアにささげた青春

 クッキーズの歴史は、同高が男女共学になる前の2004年春、吉村玄さん(36)がクラスの友人らをチアに誘ったことから始まります。

 当時、「ウォーターボーイズ」やチアリーダーが題材のドラマが放送されていたこともあり、吉村さんは「誰もやってないことにチャレンジしたい」と考えていたそうです。集まった10人ほどで練習し、6月の体育祭で披露しました。「この時は人前でダンスをした程度で、チアというほどのものではなかったです」と振り返ります。

 迎えた夏休み、福岡大のチアリーディングチームに練習を見てもらえることになり、チアのルール、笑顔の作り方や姿勢などを教わりました。名前を「クッキーズ」に決め、9月の文化祭の出し物で、チームとして初めて演技を披露しました。


チアリーディング日本選手権大会で観客を魅了したクッキーズ(読売新聞、2006年8月25日撮影)


 学校側からも、すでにあった応援指導部に属する形で、正式な部活動として認められました。福岡県のチアリーディング協会にも登録することができ、協会からコーチを派遣してもらって本格的な練習が始まります。


 初めて全国大会に出場したのは06年8月。敗者復活戦からの参加でした。約30チームがエントリーする中、男子だけのチームは会場を大いに沸かせます。そのまま準決勝へ進み、8位の成績を残しました。「衝撃的な出来事で、この時のことは今でも忘れられません」。OBの一人で、現コーチの匹田恭平さん(34)は話します。


生徒たちを指導する匹田コーチ(左)


 チアの大会では、試合を見ているライバルも、他チームの演技に拍手や声援を送るのが”きまり”といいます。匹田さんは「自分たちが演技をしているとき、まるでアイドルのような歓声を浴びました。感動して震えが止まりませんでした」と、チアの魅力に引き込まれた”瞬間”のことを教えてくれました。


 翌年以降もチームは全国大会に出場し、11年には最高の3位に輝きました。

夢に向かって走れ!!


力強くポーズを決める生徒たち


 クッキーズには毎年10人前後の新入生が加わりますが、ほとんどは未経験者です。「高校で新しいことに挑戦したい」「人気者になりたい」といった思いを抱いて入部した生徒たちを、卒業生らが練習や応援でサポートします。


 「自分たちが体験した感動を、今の生徒たちも感じてもらえるとうれしい」と匹田さん。指導に熱が入ります。

 クッキーズは男子だからこそのパワーと、物おじしないチャレンジ精神が持ち味のチームです。生徒たちは「あいつができとーのに、何でオレはできんとー」などと切磋琢磨(せっさたくま)しながら、さらに上を目指して練習に取り組んでいます。


体を回転させながら高く飛ぶ楠田さん


 「この学校でチアをできたらきっと楽しいはず」。キャプテンの楠田さんも、そんなチームカラーにひかれ、大阪の中学から福大大濠の門を叩きました。5歳の頃にチアを始めた楠田さんは、大会で活躍するクッキーズの演技を見てあこがれたそうです。


3層のピラミッドを練習するクッキーズ


 「20年続けてきたクッキーズの良さがもっと伝わり、たくさんの人を元気にできたらいいな」と匹田さん。「大きな目標を掲げ、全員で一つのものを作り上げていく。チアって青春なんです。生徒たちは今、まっすぐ夢に向かって走っていますよ」




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