【山口】阿武の養殖ヒラマサがブランド魚並みの人気に

 山口県阿武町奈古の「小野水産」が、近海のいけすで育てた養殖ヒラマサが話題だ。近海産のマアジなど良質の餌と、鮮度を保持する神経締めにより、店頭で扱うスーパーの関係者は「鮮度と脂の乗りは一級品」と太鼓判を押している。

「小野水産」の看板商品


水揚げ直後の養殖ヒラマサを神経締めする進二さん


 養殖ヒラマサは、代表の小野勝美さん、弟の進二さんが、父の清さんから引き継いだ看板商品。例年6月頃、潮通しのいい沖合数キロに設置した2基のいけす(直径13メートル)に、長崎県・対馬沖で取れた体長20~30センチの稚魚約6000匹を放つ。約2年かけて育てた成魚は、体長約70センチ、3.5キロほどで、近隣の道の駅や鮮魚店で天然ものを超える高値がつくという。

 ただ、稚魚がいけすを回遊しやすい飼育密度を保つため、生産量は年間20トンと限られる。進二さんは「生産量が限られており、スーパーに売り込む考えや、すべがなかった」と話す。

 小野水産は、酒かすを混ぜた餌で魚介類を育てた県のブランド魚「ほろ酔いさば」で注目を集めている。県内を中心にスーパーを展開する「丸久」(山口県防府市)は昨夏、農水産物の地産地消に取り組む中で、高い養殖技術と養殖ヒラマサの高い鮮度を知り、取引を決めた。

身の締まり、脂乗り良し 

 今春、同社は直送の流通ルートを確保し、山口市内の直営スーパー4店舗で月2回の直売を始めた。口コミで評判となり、ブランド魚並みの人気だという。

 「アルク小郡店」では1回に6~8匹を仕入れ、ブロックや刺し身で販売。通常の養殖ものと変わらない価格設定のためか、毎回、40パック余りがほぼ完売している。


アルク小郡店の特設コーナーに並ぶ養殖ヒラマサ

 店の担当者は「朝いちで仕入れているので、鮮度が抜きん出ている。身の締まり、脂の乗りもよく、一度食べたら他のヒラマサは食べられないとの声も聞く」と語る。

 勝美さんと進二さんは「兄弟でこつこつとやってきたことを評価してもらい、うれしさと同時に驚いている」と喜んでいる。


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