【鹿児島】101歳の鉄人、記録更新へマスターズ陸上に出場
5歳刻みの部門別で競う日本マスターズ陸上競技選手権に挑み続ける101歳のアスリートがいる。四つの世界記録と15の日本記録を持つマスターズ陸上界の「鉄人」、宮内義光さん(鹿児島市五ヶ別府町)。10月4日、福岡市の博多の森陸上競技場で始まる福岡大会では、最高齢の選手として男子100~104歳の部の400メートルと800メートルに出場し、昨年マークした世界記録の更新を狙う。
「自分との戦いです」
身長1メートル57、体重46キロ。大会を約2週間後に控えた9月21日、念入りにストレッチをした後、両腕を大きく振りながら安定した足取りで自宅前の小道を快走した。「同世代の選手がいないので、自分との戦いです」と笑う。
農家の6人きょうだいの三男として鹿児島市で生まれた。自宅から尋常高等小学校まで約8キロの道のりを、はだしで登下校したことで自然と脚力が強化された。
戦後、鹿児島市役所に就職し、24歳で陸上部に入部。アンカーを務めた駅伝大会で優勝するなどチームに貢献したが、結婚を機に26歳で競技から離れた。健康維持のためランニングは続けたものの、大会には出場しなかった。
転機は63歳の時。民間企業に再就職後、後輩から誘われて出場した大会で好記録を出し、再び情熱が湧き上がった。毎朝10~20キロを走り、大会にも出場するように。65歳からマスターズ陸上には毎年出場している。
仲間との交流が原動力
昨年は出場した大会や記録会で快走し、400メートルで3分30秒26、800メートルで8分9秒74、1500メートルで16分1秒54をマークし、いずれも100~104歳の部の世界記録をたたき出した。「普段は一人で練習しているが、大会に出ると仲間たちと交流できる。走り続ける原動力になっている」と話す。
今は体調と相談しながら、自宅周辺でウォーキングを挟みながら走って体力づくりに励む。朝食は納豆と乳酸菌飲料、夕食には焼きニンニクと、アロエを漬けた焼酎のお湯割りを欠かさない。農作業にも汗を流しており、「無理せず継続することが大事だ」と長寿の秘訣(ひけつ)を語る。
大会のたびに未明から弁当を準備し、応援に駆けつけてくれた妻・トヨ子さんが2016年に84歳で亡くなり、今は同居する長女・ひろ子さん(73)が大会に付き添う。ひろ子さんは「正直に言えばハラハラするが、元気に走る姿を見られるのはうれしい」とほほ笑む。
4人の子どもと8人の孫に恵まれた宮内さん。「応援してくれる家族や仲間がいることをありがたく思う」と語り、「練習の成果を発揮し、悔いのない走りをしたい。負けず嫌いなので」と大会を心待ちにしている。
日本マスターズ陸上競技選手権
中高年の健康維持や増進を目的に、18歳以上なら誰でも参加できる。短距離や長距離、跳躍、投てきなどの種目が行われ、18~24歳を除いて5歳刻みでクラス分けされている。福岡大会は10月4、5日、11月3日の日程で開催される。男子28種目、女子26種目に約2100人が参加する予定。