福岡市博物館で開催中の特別展「徳川家康と歴代将軍」 注目の展示を学芸員に聞いた
記事 INDEX
- 家康がもっとも愛用した刀剣
- 親しみがわく鼻眼鏡
- 慶喜、幕政改革 決意の書
福岡市博物館(福岡市早良区百道浜)で9月5日まで開催中の特別展「徳川家康と歴代将軍~国宝・久能山東照宮の名宝~」。静岡市の久能山東照宮に伝わる甲冑(かっちゅう)や名刀、書画など徳川家の足跡をたどる約150点の中から、会場で「注目してほしい展示品」を市博物館の学芸員に解説してもらいました。
※福岡県には、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令されています。外出時には感染防止の徹底を心がけてください。
家康がもっとも愛用した刀剣
徳川家康を祭神とする久能山東照宮には約50口の刀剣が所蔵される。そのうち1口が国宝、13口が重要文化財に指定され、質の高さを示している。
なかでも家康が生前もっとも愛用した「太刀 切付銘 妙純傳持、ソハヤノツルキウツスナリ(無銘 三池光世作)」は、家康没後、その亡骸(なきがら)とともに久能山に納められ、御神体同然に本殿内陣で大切に守り伝えられてきた久能山東照宮随一の名宝である。
その刀剣が作られたのは、ここ福岡の地であるから里帰り展示となる。筑後国三池(大牟田市)の刀工・光世による鎌倉時代の作である。
(堀本一繁・主任学芸主事)
親しみがわく鼻眼鏡
久能山東照宮には家康が晩年に使用したべっこう製の目器(めき)が伝わっている。見た目は今日の眼鏡とほぼ同じだが、つるの部分がなく、手で持って鼻に掛ける鼻眼鏡と呼ばれる形式だ。西洋製とも言われるが、よく見るとブリッジの部分に寺院建築の部材のような透かし彫りが施され、日本で作られた可能性もある。
家康は晩年に次のような歌を詠んでいる。「目は霞(かすみ)、耳は蝉(せみ)なく歯は落(おち)て、雪をいたたく年の暮かな」。長く続いた戦国乱世に終止符を打ち、没後は神として祀(まつ)られた家康。しかし、この目器を見れば我々と同じひとりの人間だったことが感じられ、親しみがわく。
(末吉武史・主任学芸主事)
慶喜、幕政改革 決意の書
15代将軍慶喜は能書家で知られる。慶応2年(1866年)12月5日に将軍宣下を受けて間もなく、この雄渾(ゆうこん)な一行書は揮毫(きごう)された。「発必中」<発すれば必ず中(あた)る>とは、一度で成功させるという意味である。
将軍就任後の慶喜は幕政改革を次々と断行し、わずか10か月で大政奉還に踏み切った。こうした歴史を知ればなおさら、内憂外患の時代、数え31歳で国政を担った若き将軍の壮烈な決意のように感じられる。
会場には、才気煥発(かんぱつ)な幼少期の書や円熟した晩年の作も並ぶ。書風から慶喜の生涯を辿(たど)ってみてほしい。
(佐々木あきつ・学芸員)
イベント名 | 特別展「徳川家康と歴代将軍~国宝・久能山東照宮の名宝~」 |
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会期 | 9月5日(日)まで |
開催場所 | 福岡市博物館(福岡市早良区百道浜3-1-1) |
開催時間 | 9:30~17:30(入館は17:00まで) |
料金 | 一般:1500円/高校・大学生:900円/中学生以下:無料 |
公式サイト | 特別展「徳川家康と歴代将軍~国宝・久能山東照宮の名宝~」 |