地域交通の未来を支える自動運転バス 福岡空港で大型車両の実証実験がスタート
記事 INDEX
- センサーで360度を検知
- 安定した乗り心地を体感
- 2025年までに実用化を!
ドライバー不足や不採算路線の維持などバス事業が直面する課題の解決に向け、西日本鉄道(福岡市)は大型自動運転バスの実証実験をいすゞ自動車、三菱商事、福岡空港の運営会社と共同で3月8日に始めました。空港内の限られた区域を一般客を乗せずに走行する「レベル2」(部分運転自動化)の実験で、1か月にわたって行います。
センサーで360度を検知
西鉄は、経済産業省、国土交通省の事業の一環として、小型・中型自動運転バスの実証実験を北九州エリアで2020年から行ってきました。これまでのノウハウをいかし、同社としては初めて大型バスによる実験に乗り出すことになりました。
自動運転はレベルが0~5に分かれ、システムの介入が多くなるにつれてレベルが上がります。レベル2までは運転の主体は人、3以降はシステムが主体となります。
いすゞが培った技術で開発した今回の実験用車両(定員79人)は、見慣れない機器が内外に散見されます。車体の前後左右に八つある赤外線センサー「LiDAR」は、車両周辺360度をスキャンして道路の構造物や障害を検知。信号の色を識別する望遠カメラや衛星測位システム「GNSS」など多数の最新技術を導入しています。
3月10日に行われたメディア向けの試乗会で、西鉄自動車事業本部技術部の山口哲生部長は「主力の大型バスによる実験を待ち望んでいました。得られた知見を安全対策の面でも展開していきたいです」と期待を示しました。
安定した乗り心地を体感
いすゞの担当者によると、「LiDAR」で検知したデータを3Dマップと照らし合わせて自車の位置を把握。マップには走行予定のルートがインプットされており、システムがその経路をなぞる形でハンドル操作を行う仕組みになっています。
このバスに試乗してみると、座席から見えるように設置されたモニター画面を通し、予定ルートに沿ってハンドルが自動で動く様子がうかがえます。実験では安全のため、速度を30キロに落とした状態での走行でしたが、ドライバーによる運転と差のない安定した乗り心地を体感できました。運転席には乗務員の姿もありますが、緊急時や対向車とすれ違う際を除き、操作はシステムが担うことになっているそうです。
自動運転は自家用車で普及しつつありますが、いすゞASシステム開発部の矢澤康宏部長は「普通車と異なり、長さのある車を狙い通りに動かすのは難しい。車両の挙動を抑え、いかに安心して乗ってもらえるかという点に苦心しました」と語ります。
2025年までに実用化を!
福岡空港の運営会社は、国内線と国際線の旅客ターミナルビルを結ぶバスで自動運転技術の導入を目指しており、今回の実験ではこの区間1.4キロを1日8往復します。乗務員が自動運転に介入して手動でバスをコントロールした際の状況や頻度、乗客に見立てた重りを載せた走行テストなどを通して、技術や安全面の評価、実用化に向けた課題の検証を行うということです。
今後、自動運転の技術レベルを段階的に上げて、2025年頃には限定されたエリアで運転操作をすべて自動で行う「レベル4」(高度運転自動化)を実現することが目標です。バス業界の労働力不足を打開する一手として、関係者の期待は高まっています。